運動会の「組体操」 事故があった時の責任はどこへ?

運動会などで行われている組体操。学生時代に経験した読者の皆様も多いのではないでしょうか。

厳しい練習をして、本番でいい演技が出来た時の達成感や充実感は得難いものが有るかもしれませんが、一方で練習中や本番での演目の失敗により負傷することも珍しくありません。

中には重い障害が残り、不自由な生活を強いられる生徒もいます。こういった場合、生徒負傷の責任は誰が負うのかということについてお話ししたいと思います。

学校子供

●学校、教師、生徒……責任の行方は?

こういった学校生活における事故の場合、責任の所在として真っ先に浮かぶのは、「学校」ですよね。実はその発想、ほぼ正解です。

ただ、「学校」といってもそのトップである校長先生が個人責任を問うということではなく、「学校」運営する主体(設置者)に対して責任を求めていくことになります。

具体的には、国公立の学校の場合は、国、都道府県、市町村などです。負傷した生徒が通っていた学校が県立高校であれば、その県に対して責任追及を行います。

これは、「国家賠償法」という法律に基づく責任追及の方法です。国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」と定められています。

ここにいう「公務員」は、組体操事故の場合、現場等で組体操を指導監督等している教師を意味します。裁判例によると、県立高校で発生した組体操の練習中の事故により重い障害を負った例で、県に対して1億円以上の賠償が認められた例があります。

 

●私立学校の場合

一方、私立学校の場合、その運営主体は基本的には学校法人ですので、その学校法人に対して責任を追及することが可能です。法律上の根拠は、民法の「使用者責任」です。民法715条1項本文は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と定められています。ここにいう「他人を使用する者」は学校法人を、「被用者」は教師を、「第三者」は負傷した生徒等を指します。

なおこの他、学校が国公立であろうと私立であろうと、学校設置者に対して契約上の責任を追及することも理論上は可能であると思います。

 

●教師個人の責任は?

では、組体操を指導していた教師に対して責任追及が可能でしょうか。この点、まず国公立学校の場合、国家賠償法上の責任を追及する以上、一教師に対する個人責任は求められません。

一方、私立学校の場合、教師にも責任を負わせることは可能です。もっとも、賠償能力の面でいえば通常は教師よりも法人の方があるでしょうから、あえて教師に賠償責任を求めるという意味合いは少ないかもしれませんね。

 

●原因をつくった生徒の責任は?

最後に、組体操事故の原因を作った生徒個人やその両親等に責任を求めることが可能でしょうか。答えとしては、「無いとは言い切れない」というところです。

もし、負傷した生徒とは別の生徒が、誰か他の生徒に怪我をさせる目的等でわざと体勢を崩したり悪戯をしたというケースであれば、その生徒(年齢等にもよります)や親権者等に対して責任を求めることも可能な場合もあり得ると思います。

 

*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)

写真:リュウタ / PIXTA(ピクスタ)

河野先生
河野 晃 こうのあきら

水田法律事務所

兵庫県姫路市本町68-170大手前第一ビル3階

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