映画館の「水曜日はレディースデー」……全国各地で当たり前に行われている割引サービスです。
映画館以外にも、飲食店、カラオケ店、パチンコ店、野球場などでも、特定の曜日などをレディースデーと銘打って女性に限り優遇的な措置を採ることで集客アップを図っています。
女性にとっては嬉しいことだとは思いますが、一方で優遇を受けられない男性からは「性別による差別じゃないの!?」という意見もあるようです。
個人的には今まで考えたこともありませんでしたが、言われてみれば、「男女問わずにサービスを受けられるようにしてくれてもいいのになぁ」、という思いが少し芽生えてきました。
ちょっと違いますが、ファミレスなどのメニューにある「レディースセット」にしても、男性には受けられないサービスですよね(レディースセットに関しては、勇気を出して頼んでみれば案外OKなのかもしれませんが……。)
本日は、こういったレディースデーが法的に性別による差別に当たるのかという点について少し掘り下げて考えてみたいと思います。
●憲法は性差別を禁止している
性別による差別に関しては、憲法第14条1項に規定があります。
同条項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定されています。
この通り、憲法には性別によって差別してはいけないと明記されています。しかし、最高裁判所はこの規定に関し、『絶対的な平等を保障したのではなく、合理的な差別化(区別)であれば許容されるべき』というスタンスを取っています。
理解しやすい例としては、女性に対して産休や生理休暇が認められるというものがありますね。
●「レディースデー」はアリ?
では、「映画館にレディースデーを設定することが合理的かどうか」という視点で考えてみましょう。
レディースデーが設けられている理由は、いうまでもなく営業的なものです。平日に女性が通常時よりも良いサービスを受けられることにより、女性の集客アップを目的とするものです。
より厳密に分析すると、レディースデーのターゲットは主に平日の日中に自由な時間がある人(≒主婦層)であるといえます。集客アップを目的とする以上、「来店できる人」をターゲットにするのはむしろ当然です。
また、女性は男性に比べて複数での行動を好む傾向にあります。仲間同士で自分が行ったお店などについて情報交換することも、男性と比べて多いといえます。そうすると、男性を優遇するよりも女性を優遇した方が集客アップの効率が良いといえます。
さらに、デートなどの行先を決めるのは基本的に女性です。女性客を掴めば、一緒に来る男性客も掴めるという理屈も存在します。
以上、完全に僕の個人的な見解(仮説)です。精密な統計に基づいたものではありません。
●仮説通りなら違法にはならない
仮に、この見解が正しいとすれば、営利を得ることが目的である各企業が、営業上合理的な理由でレディースデーを設けることは、合理的な区別であるため、違法とはいえないということになります。
しかし、上記仮説が完全に的外れだというのであれば、「レディースデーは男女差別である」という余地はありえます。
ただし、営利活動を行う企業や個人には、どういう経営戦略をたてるかにつき一定の自由がありますから、それを超えて違法だとなるためには、男女の違いによって相当大きな差を設けられているようなケースに限られるのではないかと思います。
週に1回女性は数百円安くなるという程度の優遇であれば、違法とまで評価することは難しいのではないかと思います。
*著者:弁護士 河野晃 (水田法律相談所。兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活5年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています)