お笑いコンビの「8.6秒バズーカー」についてネットで広がる「反日疑惑」について否定したと話題になっています。
疑惑の内容は、8.6秒は広島に原子爆弾が投下された8月6日に、「ラッスンゴレライ」は投下命令を意味する「落寸号令雷」に由来する、などです。
他にも様々な憶測が飛び交っており、それっぽいものから無理やりこじつけたものまで、「彼らは反日だ」という憶測は多数あります。
これらは全くの事実無根ということですが、このような風評被害は法的に見るとどうなるのでしょうか。
■風評被害についての基礎知識
風評と一言で言ってもいろいろな類型があります。
たとえば、食品に対する風評ということだと、「あの食品はあぶない」といった形でされることがありますが、その食品がいろいろな生産者やメーカーが作っている場合と、特定の生産者やメーカーが作っている場合があります。
つまり、A 商品一般に対する風評 と、B 特定の商品に対する風評 があります。
いずれの場合も、その食品の生産に関わっている人たちは風評被害を受けるわけですが、両者はそれぞれ法的に問題にできるかどうかという点で異なってくることがあります。
このような風評被害で問題になり得るのは、名誉毀損や信用毀損です。
名誉毀損とは社会的評価の低下を招くことであり、信用毀損とは経済的な意味での信用低下を招くこと(商品についての信用の低下も含む)を指します。
しかし、罪とするためには、特定の人(法人を含む)の社会的評価や信用を害する必要があります。
食品の例で言えば、いろいろな生産者やメーカーが作っている場合は、特定の商品について何か言っているわけではない以上、罪に当たるとすることは難しくなります。
■狙い撃ちはアウトになる可能性大
今回の「8.6秒バズーカー」に対する風評被害は、「8.6秒バズーカー」という特定の人物(コンビ)に対するものです。そして、その内容は、原爆を落とすように促している、反日であるといったものです。
このような内容は、多くの日本人にとって反感を覚えるものといえ、このような風評被害が広まってしまったのも反感を覚える人が多かったからだと思われます。
多くの人が反感を覚えたということは、「8.6秒バズーカー」の社会的評価を低下させたといえることになりそうです。したがって、名誉毀損が成立するということができるでしょう。
■言い出した人以外にも責任がある
風評被害の発生原因を特定することは難しいことも多いです。
しかし、名誉毀損を成立させるような事案においては、拡散行為を行った者がそれぞれ責任を負う可能性があるということを認識した方がよいでしょう。自分が言い出したことではないから、ということは言い訳にはなりません。
不確かな情報を鵜呑みにすることなく、情報の真偽を確かめるようにするのが重要でないかと思います。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)