GoogleにGoogleマップ上の口コミを削除せよという仮処分決定が発令されたということがニュースになっています。一部報道では、「ネガティブな顧客体験」を削除しろと命じたという報じられ方をされているようです。
Googleマップ上の口コミというのは、いわゆる「Google+」(グーグルプラス)のことです。Google+は、GoogleにおけるSNSであり、マップ上にあるスポットに対して口コミを投稿できる機能を備えています。
Googleは、「Googleが課しているポリシーに違反していない」などとしているようであり、一部報道では運営会社に口コミの削除を命じるのは珍しいとれているようです。
しかし、これらが正しいものではないということを知る必要があるでしょう。
■Googleのポリシーと権利侵害の有無は無関係
Googleが課しているポリシーというのが具体的にはどのようなものかを確認してはいませんが、Googleはしばしばこの種の主張をします。
ポリシーには、一般的には誹謗中傷をしてはいけないといったことが書いてあり、それ自体は必ずしも不合理というわけではありません。しかし、これは法的には意味のある主張ではないといえます。
削除が認められるかどうかは、人格権侵害があるのかどうかという観点から判断します。そして、その判断は最終的に裁判所がするわけですが、その際に考慮するのは侵害の有無と、侵害を正当化する理由があるかどうかという点です。
つまり、Googleのポリシーに反していないのかどうか、ということは一切考慮要素になりません。
したがって、今回の決定においては、書込みが行き過ぎなものであると判断されたということで、それに尽きるということになるでしょう。
■運営会社に削除を命じるのは「一般的なこと」
運営会社に口コミの削除を命じるのは珍しいとの一部報道があるようですが、これは全く正しくありません。
通常、ネットへの書込みは匿名でされているので、誰が書込みをしているのかということは第三者からは窺い知れません。したがって、たとえ誹謗中傷をされても誰が書き込んだのか分からないという状況が生じます。
そうすると、それらの削除ができないということになるのでしょうか。結論的に、そんなことはなく、普通はそのサイトの運営会社、サイト管理者などに削除を請求していきます。
削除は裁判を使わない手続きで行うか、裁判が使われるにしても普通は「仮処分」という非公開の手続きを使うため、判例を検索しても見つりません。そのため、「珍しい」などとされたのかもしれません。
■今後の展望
ところで、Googleは日本向けサービスは「google.co.jp」というドメインで提供していますが、このGoogle+はグローバルサービスとして提供されているため「google.com」というドメインで提供されています。
google.comドメインについての決定は、日本では初めてかもしれません。Googleはグローバルサービスについては、各国の裁判所の命令に従っていないということらしいですし、Googleはこの決定に対して異議を出していくようです。
そのため、今後どのような判断がされ、また、Googleがどのような対応するのか、個人的には注目しています。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)