ドランクドラゴンの鈴木さんが、週刊誌のインタビューで語った話が波紋を広げています。
インタビューでは「心休まる暇がありません。自由な時間はほとんどなく、朝、たたき起こされてから寝るまで、掃除、洗濯、料理とコマネズミのように働かされます」「(妻が)俺の頭を強くはたき、首を絞めつけてくるんです」「俺は奴隷じゃないんだから」(女性自身より引用)などと語りました。
これに対し、ネット上では「妻がやり過ぎ」「鈴木の発言に悪意がある」など様々な意見を巻き起こしています。
「立派なモラハラでは?」という声もあるようですが、そもそもモラルハラスメントとは、一般に身体的暴力を伴わず、精神的な暴力で相手を攻撃するものであると考えられています。
このモラルハラスメント、結婚してから気付いて、苦痛に耐えながら生活している人もいるのではないでしょうか。
それでは、今回のドランクドラゴン鈴木さんのケースは、モラルハラスメントなどに該当するのでしょうか。
●モラハラの前に「暴行罪」?
今回のケースでは、最終的に頭を強くはたき、首を絞めつけてくるということですから、身体的暴力を伴っており、この暴力については暴行罪に該当します。
もっとも、よっぽど頻繁であるとか、暴行によって傷害を負ってその程度が著しいなどの理由で、鈴木さんが被害届を出すなどしない限りは立件されるようなものではないと思います。
もちろん、鈴木さんの方で被害を申告するようなことがあれば、警察は捜査を開始するとは思います。また、相手が奥様であることから、いわゆるDVにあたる可能性があります。さらに、身体的暴力については、これを受けたことによりけがをしたのであれば治療代等の損害賠償請求も可能となります。
●言葉の暴力は法的にどうなる?
一方で、言葉の暴力についてはどのように考えることができるかというと、言葉の暴力を受け、それにより精神的な病、例えばPTSDなどになってしまった場合には、民事上の損害賠償請求が可能であると思われます。この場合には、治療費はもちろんのこと、精神的なダメージを受けたことを理由に、慰謝料としていくらか支払うことができるように求めることが可能です。
しかしながら、仮に言葉の暴力で傷ついたとしても、それだけで慰謝料を求めることができるかというと少し難しいのではないか、と思います。
もちろん、精神的なダメージを受けたことはそのとおりだとは思いますが、それだけでは、誰でも傷ついたといえば損害賠償が認められてしまうことになりかねません。
言葉の暴力の程度にもよりますが、夫婦間のけんかの延長のようなものについては、慰謝料請求の対象とはならず、どう考えても行き過ぎた行為については、慰謝料請求の対象となるのではないか、と思います。
今回の鈴木さんのケースのような発言は、家庭内で通常見られるもので、それ自体みても慰謝料を認めなければならないほど強い言葉でもないように思います。
もちろん、これら言葉とともに暴力がある場合は、前に述べたとおりですが、言葉だけをみてモラハラだから損害賠償というような単純な話ではないと思います。
モラハラについては、モラハラという概念が浸透してからまだ日が浅いため、どのような状況で賠償が認められるかという裁判例があまり蓄積されていません。今後、モラハラがどのような位置づけとなるのか、注視していきたいと思います。
*著者:弁護士山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)