2013年4月から実施されている「サイバー補導」。
2014年末までの間に約600人の18歳未満の少女らが補導されたと報じられました。
ところでサイバー補導という言葉を聞いた事はあるでしょうか?サイバー補導と言うだけあって、ネット上で補導する……?と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。このサイバー補導、いったいどんな目的で、どのように行われているのか、そもそも補導とは何なのか、懸念点について解説します。
●そもそも補導って何?
補導とは、20歳未満の少年を対象に、非行を防止することを目的として、非行の深化を抑止するために適切な措置を講ずることをいいます。具体的には、警察官が街頭を見回り、深夜に徘徊、暴走行為、飲酒・喫煙、器物損壊等を行っている少年に対して注意や指導を行うことです。
なお、豆知識として法律上は女性でも「少年」といいます。
●サイバー補導の目的と特色
現在行われているサイバー補導は、そのほとんどが少年を性犯罪から守る目的で行われています。
警察官がネット上で売春、援助交際、使用済み下着の売買などを持ちかける書込みを見つけると、身分を明かさずに少年と掲示板、アプリ、メール、LINE等でやり取りを行い、実際に少年と会ったときに補導するという手法で行われており、一種のおとり捜査に近いところに特色があります。
以前は深夜に徘徊している少年と直接会うことによって非行に走りそうな少年たちの顔や名前を所轄の少年課が把握しており、注意や指導を行うだけでなく、少年たちがトラブルに巻き込まれたときは相談に乗ったり情報を把握したりするという機能がありました。
今は少年のほとんどがスマートフォンやPCを持っているため、匿名・非接触で売春、援助交際、下着売買の合意をすることが可能です。そのため、サイバー補導が導入されたという経緯があると考えられます。
しかし、報じられたニュースによれば、警察官が少年に接触しようと試みたものの接触できなかった件数は1万1,955件に上っているそうですから、少年からの返信率を上げるために実際に補導した少年からメールの文面を教わること等、警察は今後もサイバー補導の実効性を上げるための工夫をしていくことになるでしょう。
●サイバー補導は違法ではないのか
条件を充たさなければ違法とされるおとり捜査に近いサイバー補導は違法なのではないかという疑問が浮かぶ方もいるかもしれません。
しかしながら、(1)そもそも補導の目的は少年の非行の防止・保護にあること、(2)売春等を持ちかける書込みに返信する手法のため売春等を誘発するわけではないこと、(3)売春等の防止のために必要であることより、少年が売春等を行う意欲を失った後もことさらに売春等を迫るやり取りを行ったりするのでなければ違法にはならないでしょう。
買主と会わない方法での下着の売買でも、待ち伏せされたり住所を特定されたりして性犯罪に巻き込まれるリスクがありますので、少年の皆さんはサイバー補導を煙たがるのではなく、安易な売春、援助交際、下着の売買等を行わないようにしましょう。
*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング。)