卒業・転勤シーズンも近づき、就職・入学のため引越しをする人も多くなる季節になってきました。
引越しというと、荷造り・荷解きはもちろん大変ですが、様々な届出・契約をしなければならないことも煩わしさを感じるものです。
そこで、今回は、ついつい忘れてしまいがちな住所変更の手続について、法律上どのようなルールが定められているか、住所変更しないとどのような不都合があるのか、お話することにします。
■「転居届」「転出届」「転入届」とは?
住民基本台帳法という法律によれば、引越しの際に必要な届出として「転居届」「転出届」「転入届」の3つが定められています。
このうち、「転居届」とは前と同じ市区町村の中で引越しをして住所が変わった場合に、行わなければならない届出を指します。
これに対し、「転出届」「転入届」とは、それまで居住していたところとは異なる市区町村に引越しをする場合に必要な届出です。引っ越す前の市町村に転出予定日などを届け出るのが転出届、引っ越した市区町村に引っ越した日や前の住所などを届け出るのが転入届となります。
転居届と転入届は、それぞれ転居した日、転入した日から14日以内に行わなければならないと定められています。
■届出を怠った場合の罰則
先の3つの届出を正当な理由もないのに怠った場合には、5万円以下の過料を支払わねばならなくなる可能性があります。
なお、過料とは法律上の義務に違反した場合に課される金銭罰であり、刑罰ではありません。支払いを命じられたとしても、前科や前歴となるわけではありません。
正当な理由というのは、例えば病気や事故で怪我をしたために14日以内に届出できなかった、というケースが考えられます。
■過料以外に考えられる不利益
先の届出をしなかった場合に生じる他の不利益として考えられるのは、まず、選挙権を行使できない場合がありうるという点です。
市区町村の選挙人名簿に登録されるのは、転入届を出してから3ヶ月後になります。14日以内に届出をしなかったばかりに選挙人名簿に登録されず投票できないという事態が起こる可能性があります。
また、住民税も当然住所が置かれている市町村で課されることとなるため、届出を出していなかったばかりに高い税金を支払わねばならないといった事態になることもありえます。離婚等の事情により子供を一人で育てているケースでは、その市区町村から児童扶養手当を受け取ることができないといった不利益が生じる場合もありえます。
たかが届出1つと考えている方もいるかもしれませんが、怠ることによって被る不利益も少なくありません。引越しをする場合には早めに届出をするよう心がけましょう。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)