「イスラム国」への加入を日本政府が禁じることは不可能なのか?

先日、東京在住の日本人とフランス人の夫妻が、イスラム国に加入するとみられたことから日仏両政府の関係者が渡航を思いとどまるよう説得を行ったというニュースがありました。

これ以前にも、日本の男子大学院生が戦闘目的でイスラム国に加入しようとしたところ、警視庁から私戦予備罪の容疑で事情聴取を受けたこともありました。(参考:戦闘員として働くつもりだった北大生「私戦予備および陰謀」とはどんな罪?

イスラム国に個人が加入することを、国は禁じることはできるのでしょうか。できるとしたら、それはどのような場合でしょうか。この点について考えてみたいと思います。

シリアの街

■「思想・信条の自由」、「信教の自由」、「結社の自由」とイスラム国

日本国憲法は、個人の権利として「思想・信条の自由」、「信教の自由」、「結社の自由」を保証しています。

いかなる思想を持とうと、どんな宗教を信じようと、どんな団体(政治団体も含みます)を作ったり、加入したりしようとも個人の自由であり、国はこれを例外的な場合を除いて制限することはできない、というものです。

ただ、「信教の自由」や「結社の自由」は、「公共の福祉」に反しない限りで保障されることとなります(思想・信条の自由は、純粋に内心の問題なので、規制を受けないと考えられています)。「公共の福祉」とは、具体的には、他者の人権を侵害しない限りで人権が保障される、という意味といえます。

どのような宗教を信じるか、政治的にどのような思想を持ってどのような活動をするかは、個人のアイデンティティに深く関わる問題です。

そして、戦前、日本には、神道を国の宗教とし、かつ結社の自由をはじめとする表現の自由を厳しく規制して、戦争への道をひた走ったという歴史があります。そのため、信教の自由や結社の自由に対する規制には、抑制的でなければならないと考えられています。

 

●国は加入を禁止できない可能性が高い

確かに、イスラム国は、他教徒を無残に殺害する凶悪なテロリスト集団と日本や西欧諸国では考えられています。

しかし、思想・信条の自由の観点からすれば、イスラム国の思想に共感すること自体を処罰したり禁じたりすることはできません。また、イスラム国が基盤とするイスラム教の教えを信じること自体を禁じることもできないでしょう。

そして、イスラム国に加入することも、その人の加入によって、日本国民の人権が侵害される具体的な危険がない限りは、禁じることはできないと考えられます。

先に渡航した夫妻に対して、政府関係者が「説得」に留まり、出国禁止という措置をとらなかったのは、イスラム国が日本攻撃を計画している、彼らが行くことによって日本攻撃が開始されるなどといった事情が確認されなかったからではないかと考えられます。

 

■イスラム国への加入を禁止できるとしたら、どのような場合か。

この点の判断は非常に難しいですが、例えば、イスラム国がその勢力及び攻撃性を強め、日本に対して攻撃を仕掛ける危険性がかなり高くなってきた段階では、加入しようとする人に対して出国禁止の措置を取ったり、その他私戦予備罪や、外患誘致罪などによる処罰を行うことによって、加入禁止とすることができるでしょう(イスラム国加入禁止法のような立法も可能かもしれませんが、他の団体に対する加入も規制されてしまう恐れがあり、難しいでしょう)。

このような段階に至る手前の段階で規制することも、あるいは可能かもしれません。が、これらの問題は個人のアイデンティティに関する問題を多く含むため、どのようなケースで規制するかの判断が、かなり難しいことは間違いありません。

 

*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)

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寺林 智栄 てらばやしともえ

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