読者のみなさんの中には、付き合っている恋人に浮気をされて傷ついたという経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
夫婦のどちらかが浮気をし、慰謝料を請求するというケースはよくある話ですが、恋人に浮気をされて傷ついた気持ちを、慰謝料という形で恋人に請求することはできるのでしょうか。
恋人の浮気に対して慰謝料を請求したという話はなかなか聞きませんが、浮気されたことによって深く傷ついていることは間違いないので慰謝料が請求できると思うかもしれません。
そこで、今回は、夫婦関係にない恋人同士の浮気も慰謝料の対象となるのかについてご説明したいと思います。
●夫婦とカップルでは大きな違いがある
まず、夫婦間においては、法律上、お互いに配偶者以外の異性とは性行為をしてはいけないという義務(貞操義務)を負っているところ、浮気(=不貞行為)は、当該義務に違反するため、慰謝料の対象となります。
この点、夫婦関係にない恋人間においては、法律上、お互いに恋人に対して貞操義務を負っていません。
すわなち、恋人関係においては、恋人以外の異性との間で性行為をすることは基本的に自由です。そのため、恋人に浮気をされたからといって、その恋人に対して慰謝料を請求することはできません。
意外に思われるかもしれませんが、「付き合っている」という法律上の契約はないため、浮気をしても法律上問題に問われることはありません。
もっとも、当該恋人との間で婚約していたり、あるいは内縁関係(実質的に夫婦と変わらない生活を送っている関係)にある場合には、法律上、夫婦間と類似あるいは同様の関係ということになりますので、浮気をした恋人に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
法律上は問題がなてとも、浮気はしないに越したことがないのは言うまでもありませんね。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)