50年間無免許の男性が逮捕、罪はどれくらい重くなる?

無免許運転で逮捕された男性が、50年間無免許運転を続けていたと供述しているとの報道がありました。

半世紀も違法な行為を継続していた場合、悪質な行為と言えそうですが、刑罰はその分重くなるのでしょうか?

実は単純に重くなる!とはいかない難しい法律の考え方が存在しています。

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■起訴される事実、起訴されない事実

刑事訴訟では、検察官が裁判所に起訴状を提出します。その起訴状には、「被告人は、公安委員会の運転免許を受けないで、平成xx年xx月xx日xx時xx分頃、xx道路付近において、普通乗用自動車を運転したものである。」などと、無免許運転をした具体的な日時や場所を特定します。

そして、訴訟では、起訴状に記載された事実について、審理が行われます。

もちろん、上記のような事実を複数起訴することがありますが、今回のケースについて、「昭和41年から平成26年まで50年間」のような長期間における事実で起訴されることはありません。

 

■余罪を考慮すること

起訴状に記載されていない事実(余罪)は、処罰することはできません。

そうすると、約50年無免許運転していたと被告人が供述し余罪を認めていたとしても、起訴状に記載されない限り、それを理由として単純に刑を重くすることはできないのです。

しかし、余罪については、実質的にこれを処罰する趣旨で量刑の資料とすることは許されないが、単に被告人の性格、経歴及び犯罪の動機、目的、方法等の情状を推知するための資料としてこれを考慮する場合には、余罪考慮も許されると解されています(最高裁大判昭和42年7月5日刑集21巻6号748頁)。

つまり、他の事情を知るための間接的な事実としてならば余罪を考慮できるということです。

 

■無免許運転に関してどこまで常習性を重視すべきか

ただ、「情状を推知するための資料」として考慮するとはいっても、どのように考慮するかは悩ましいところです。

無免許運転の余罪があるということは、常習性があるといえますが、常習性があることを理由に重く処罰することになれば、実質的に余罪を罰することとの差は紙一重になっていきます。

それに、単純な一度の無免許運転と、常習性のある無免許運転と、どちらが危険な行為か、そしてどちらを重く処罰すべきかについても、一概に答えることはできないでしょう。

そうしますと、他の被告人に有利な事情の評価を弱める、という位置づけが現実的かもしれません。

 

■刑事事件後の無免許運転は重く処罰される

無免許運転は、懲役刑だけではなく罰金刑も定められています。そして、多くの場合、罰金刑から始まり、無免許運転を繰り返していくと、段階的に思い処罰を課されていきます。

50年以上に渡る無免許運転が悪質であることは当然ですが、それよりも、司法判断を経た上で再度無免許運転をしているのかという事情の方が重く評価されるといえるでしょう。

無免許運転をする場合には、他の交通法規違反もしてしまう場合が多く、事故につながる可能性もありますから、もし無免許運転をしている知人がいたら、放任はしないでいただきたいと思います。

 

*著者:弁護士 荻原邦夫(りのは綜合法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)

荻原邦夫
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荻原法律事務所

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