市が管理する「天空の城」…市が勝手に工事できない理由とは

「天空の城」として、ここ数年注目を浴びている「竹田城跡」。

雲海に浮かぶ姿が日本のマチュピチュなどとも言われ、近年各メディアが取り上げたことにより、多くの観光客が押し掛けるようになりました。

観光客が増えたことにより、段差から客が落下して怪我をするなどの被害も出始め、竹田城跡を管理する朝来市は登山道を増やす工事を行い、対策をとりました。

しかし、国や県はこの工事の存在を市から聞いていないとして中止を要請したということです。市が管理する城跡を市がどう工事しようが問題ないような気がしますが、そこには「文化財保護法」という法律が関連しています。今回は文化財保護がどのような法律なのかを解説していきます。

武田城

■文化財保護法とは

文化財保護法は、重要な価値がある文化的財産を保護しつつ、同時にそれを活用することで国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とています(同法1条)。

壮大な立法趣旨(目的)が書かれていますが、要するに歴史的に重要な価値がある有形・無形の文化や建物・史跡をきちんと保護しましょう、ということです。

同法では、文化財を「有形文化財」、「無形文化財」、「民俗文化財」、「記念物」、「文化的景観」、「伝統的建造物群」に区分し、これらのうち、重要なものを国が指定・選定・登録し、重点的に保護しています。

具体的には、歴史的・文化的に重要な価値があると思われる、絵画、彫刻、工芸品、古文書、演劇、音楽、工芸技術、貝づか、古墳、都城跡、城跡、伝統的な建造物群などが保護対象とされています。

天空の城として有名な竹田城も、文化財保護法に基づき、国から「記念物」のカテゴリーに含まれる「史跡」に指定されています。

 

■文化財保護法上の史跡に関する規制

本来、いくら歴史的に価値のある文化財であっても、それを修理しようが、売却しようが、どうしようと当該文化財所有者が所有権に基づき自由になしうるはずです。

しかし、それでは、文化財の保護・維持がなされず、歴史的価値のある文化財が経済合理性からいとも簡単に失われてしまうおそれがあります。

そのため、文化財保護法に基づき、国から史跡の指定を受けると様々な制限が加えられます。

竹田城が指定されている史跡の文化財の場合、一番大きな規制は、「現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為」の許可が必要となることです。

指定史跡を現状変更しようとする場合、国の許可がなければ無断でやってはいけません。

これは、地方公共団体であっても同じで、例え竹田城を管理する朝来市であっても、例外ではありません。

今回、朝来市は、軽微な変更で文化財保護法上の許可は不要と勘違いしたことが原因のようですが、文化財保護法では許可が不要な軽微な変更を伸びた枝を切る程度の行為と想定しており、登山道のルート変更のための付け替え・拡幅工事は、史跡の現状変更として、許可が必要です。

 

■その他の規制

史跡に指定されている竹田城は、上記以外にも、所有者が変更した際や棄損があった際の届出義務、管理・修理・公開に関する国の指示・勧告・命令などの制度が定められています。

いろいろな制限があり、指定されると面倒なこともある史跡ですが、修理などについての国庫の補助制度も用意されていますので、もちろん悪いことばかりではありません。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

*画像:Taka@城

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

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