バスや電車などの公共交通機関は、通勤や通学、日常生活の足として私たちの生活と切っても切れない存在です。
しかし、乗車料金を払わずに乗車する不正乗車が後を絶たないようです。例えば、バスなどのでは期限切れの定期券の日付部分を手で隠して乗降車しようとするといった古典的な不正が有名です。しかし、鉄道などで使われる磁気カードが導入された現在でも、磁気情報を加工して不正乗車する人も少なくないようです。
そこで、今回は、不正乗車をめぐる法的な問題についてお話しします。
■不正乗車した場合の損害賠償など金銭問題について
不正乗車は、乗車区間について本来支払うべき乗車料金を支払わっていないものですから、当然、その分の損害が鉄道会社などに発生しています。鉄道会社など公共交通機関の運営会社は、当然、正規の乗車料金を不正乗車した人に対して請求することができます。
また、公共交通機関の利用にあたっては約款が定められており、乗客は、これに服するものとされています。そして、各会社によりますが、この約款には不正乗車に対して乗車料金の何倍もの追徴金を課すことができると定められています。追徴金は常に課されるわけではなく、悪質なケースに対して課されているようです。
■不正乗車は犯罪
冒頭で例示したタイプの不正乗車は、正規の乗車料金を支払う意思がないにも関わらず、あたかも正規料金を支払っているかのように装って運送サービスを得ているという点で、詐欺罪(刑法第246条)に該当します。また、磁気情報を加工するケースは、電磁的記録不正作出罪あるいは供用罪(刑法第161条の2)にも該当します。
やはり、悪質なケースでは、会社側が被害届けを出すことにより、逮捕・勾留、起訴され、実刑判決が下されることもありえます。
不正乗車は、盗みなどと違い、不正に手に入れるものが目に見えるものでないため、罪の意識を持たずに行われることも少なくないといえるかもしれません。しかし、実際に課されるペナルティは案外大きなものであることを覚えておくべきでしょう。
*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)