道ばたや電車内で、お金やお財布などを拾ったという経験をされた方は大勢いらっしゃるかと思います。
そんな中、新潟県の教諭がFacebookに「3,000円拾いました。大切に使います」と投稿し、戒告処分となったという報道がありました。
お金を拾ったら警察に届ける、というのはマナーではなく、法律で決められています。それを怠ったということが処分の対象となりました。
しかし、お金を拾ったら警察に届ける事は知っていても、持ち主が見つからなかったらどうなるのか、拾った事に対する報酬は?など、あまり知られていないこともあります。
そこで、今回は、もし、お金やお財布を拾った場合、拾った人としては何をすべきか、または、何をしてはいけないのかについて説明していきたいと思います。
●落し物については遺失物法で規定されている
道ばたや電車内などにおいて、本来の所有者(占有者)の占有を離れてしまっている物を「遺失物」(いっしつぶつ)といいますが、この遺失物の取扱いについては、「遺失物法」という法律で定められています。
なお、法律上、落し物をした人を「遺失者」、落し物を拾った人を「拾得者」といいます。
●遺失物を拾った場合、どうすべきか?
拾得者は、速やかに、その物を遺失者に返還するか、または、警察署長に届けなければいけません。
電車内や駅の構内において遺失物を拾った場合には、その施設を管理する人(車掌や駅長など)に遺失物を交付すれば大丈夫です。
今回、商業施設内の駐車場で現金3,000円を拾った女性教諭としては、速やかに、商業施設管理者か警察署に当該現金を提出するべきでした。
遺失物を提出せずに自分のものにしてしまうと、遺失物横領罪(刑法254条)に該当し、1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性があります。
そのため、もし道ばたや施設内で、遺失物を拾った場合には、必ず、近隣の警察署や施設管理者に提出するようにしてください。
●遺失物を提出した後の手続は?
警察や施設管理者に遺失物を提出すると、遺失物の提出を受けたことを証する書面が拾得者に交付されることになります。
なお、施設管理者に提出された遺失物については、施設管理者によって警察署長に提出されるか、あるいは遺失物に関する事項を警察に届け出て、施設管理者によって保管されることになります。
遺失物の提出あるいは遺失物に関する事項の届出を受けた警察としては、インターネット等で遺失物に関する情報を公開して、遺失者を探すことになります。
もし、遺失者が見つかった場合には、遺失物は、遺失者に返還されることになりますが、遺失者が遺失物の返還を受ける場合には、拾得者に対して「報労金」を支払わなければなりません。
報労金は、法律によって、当該遺失物の価格の5パーセントから20パーセントと定められています。
そのため、今回のように3,000円を拾った場合には、拾得者は、遺失者に対して、150円から600円の報労金を支払うよう請求することができるということになります。
なお、報労金を請求する権利は、遺失物が遺失者に返還された後1か月を経過してしまうと、消滅してしまいますので、注意が必要です。
●落とし主が見つからなかった場合は?
一定期間(3か月)内に遺失者が見つからなかった場合、あるいは遺失者が遺失物の所有権を放棄した場合には、拾得者が遺失物の所有権を取得することができます。
もっとも、携帯電話やクレジットカードなど個人情報が入った物については、拾得者は所有権を取得することができません。また、薬物や刃物などの法禁物についても、拾得者は所有権を取得することはできません。
自分がお金を落とした時、無事に届けられたら嬉しいですよね。それと同じように、誰かが落としたお金を届けるのは、仮に法律で決められてなくても、とるべき行動ではないでしょうか。
*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)