女子中学生とトラブルになったことで話題となった大阪府議が、名刺をテレビで放送された事により、いたずら電話が殺到したとしてBPO抗議したようです。
元々、事務所の電話番号はサイトなどで公開していましたが、テレビという影響力の大きなメディアに晒されると影響も大きいでしょう。
名刺に書かれていた携帯電話番号がテレビで放映されたということは稀であったとしても、インターネットの掲示板に家の住所や電話番号、携帯電話番号が掲載されたということで、ジャンジャン電話がかかってきた。中には脅迫めいた電話や、ワン切り、馬鹿にした発言など、非常に不快な思いをしたということは、サイトが炎上したケースなどではよく聞く話です。
この場合、電話番号が人前に勝手に晒されたと言う事で、どういう法的措置をとることが出来るのでしょうか。
●電話番号は法的保護に値するのか
この点に関しては、電話番号も法的保護の対象となります。
ご自身に置き換えていただければと思いますが、自分の知らないところで、自分の電話番号が人前に晒されている、ということを想像してみてください。
気味悪くなりませんか?人は誰しも自分に関する情報は自分でコントロールしたいという気持ちを持っています。これをプライバシー権と言います。
従って、自分の電話番号を勝手に人前にさらされると言う事は、自分のプライバシーが侵害されたと言う事になります。
つまり、プライバシー侵害と言う事で、加害者に対して損害賠償を請求する事ができます。
この場合、相手方の反論として、例えば、もらった名刺には電話番号が書いてあり、この電話番号はもともと人前に晒す事を予定したものであるから、これをテレビやインターネットに公開して無いが悪いと開き直る可能性があります。
しかし、例え名刺に書いてある電話番号であったとしても、その電話番号が開示された範囲はごく限られた範囲内の事ではないでしょうか。
名刺交換と言う事で名刺を渡したのであれば、その名刺を渡した相手方に限った範囲でプライバシーを公開しただけであって、その範囲を超えて世間一般にまで公開した訳ではありません。
従って、もらった名刺に電話番号が書いてあったとしても、この電話番号を本人に無断でテレビやインターネットで公開する事は損害賠償の対象ということになります。
●刑事責任は発生するのか
この場合、電話をかけられた事によって、業務が妨害されたという事であれば、電話をかけた者については業務妨害罪、電話かけられた事でノイローゼになったというのであれば、電話をかけた者については傷害罪が成立する可能性があります。
それでは、電話番号をテレビやインターネットで公開した者も共犯者として罰せられないのかとなりますが、これは難しいでしょう。
公開した者が、電話番号の持ち主を貶めてやれと言う気持ちで故意に情報を公開したと立証する事は大変困難ですし、電話をかけてきた者と意思を通じていたと立証する事も非常に困難だからです。
*著者:弁護士 桐生貴央(広尾総合法律事務所。「人のために 正しく 仲良く 元気良く」「凍てついた心を溶かす春の太陽」宜しくお願いします。)