「bot」と呼ばれる自動でSNSに投稿するアカウントをご存知でしょうか。
歴史上の名言であったり、企業や個人などが定期的にお知らせしたい内容だったり、色々な内容がbotにより自動でツイートされています。中には役立つ、面白いなどを理由に数十万のフォロワーがいる人気アカウントも少なくありません。
しかし、そんなbotの中には、他人が撮影した写真やツイートなどを勝手に使用して「おもしろbot」などと名乗りツイートする「パクリbot」も多数存在します。更には、パクリbotを大量に運営している会社が荒稼ぎしている、と話題になっています。
倫理的にダメでしょ、ということは分かるにしろ、このような発言や画像の無駄使用は法律上どうなるのかを検討してみたいと思います。
■著作物侵害になる可能性が高い
著作権は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)について成立するので、他人の文書や画像には、それを作成した人に著作権が発生していると考えた方がよいです。
そのため、他人の発言が記載された書籍などからその発言や、他人のツイートなどから画像を無断で使用すれば、著作権を侵害する可能性が高いということになります。
■例外的に許される場合にも当たらない
他人の著作物につき許可を得なくても利用できる場合があり、たとえば私的利用の場合、引用に当たる場合などが代表的です。
しかし、インターネット上に公開することは私的利用の範囲を超えるものですし、そもそも本件では会社が行っていることのようですので、私的利用とはいえません。
また、引用に当たるには、一般的には以下の要件を満たす必要があります。
(1)公表された著作物であること
(2)公正な慣行に合致すること
・引用の必要性があること
・どの著作から引用されたものなのか明示されていること
・著作者の意に反する改変をしていないこと
・その分野の慣行に従っていること
(3)目的が正当な範囲にあること
・引用された部分が明確であること
・引用する側が「主」で、引用される側が「従」といえる関係にあること
しばしば引用しているだけという言い訳をされることがありますが、パクリbotではこのような要件を満たしているとはいえないでしょうから、引用ということもできないと思われます。
■10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金
著作権法違反の罪は「親告罪」であり、告訴がなければ起訴することができず、罪に問うことができませんが、仮に告訴があれば、「10年以下の懲役若しくは1、000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」となる可能性があります。
報道によると大量にパクリbotを使っていたようですから、誰かしら告訴をする可能性も否定できないと思います。
■パクリbotを見つけたら違反報告
もし自分の著作が無断で利用されているということに気づいたら、そのサービスの提供主体に連絡をしてみてください。
Twitterであれば、以下のURLから報告することができるようになっています。
*https://support.twitter.com/forms/dmca
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)