たかの友梨氏が代表を務めるエステサロン「株式会社不二ビューティ」の労働環境について内部通報した労働組合や女性が、たかの氏本人からパワハラともとれる発言などを2時間半に渡り繰り返したことが明らかになりました。
運営会社による労働基準法違反などの問題はここでは触れずに、たかの氏の言動に問題はないのかについて検証してみます。
■名誉棄損
たかの氏の発言は、従業員らとの交渉・話し合いの場でなされたようですので、会場には従業員15人や店長らがいたとのことです。
そうすると、社内の従業員がメインとはいえ、ここで特定の従業員に対し、「つぶれるよ、うち。それで困らない?この状況でこんだけ働けているのに、そういうふうにみんなに暴き出したりなんかして、あなた会社潰してもいいの」などと迫る行為は、具体的な事実を示して相手の社会的評価を低下させたものと考える余地もあり、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
ただ、「あなた会社潰してもいいの」との発言は、具体的な事実適示といえるか微妙なところもあり、名誉棄損ではなく、他の社員の前で相手の評価を低下させたとして侮辱罪にとどまる可能性もあります。
■傷害罪
ニュース記事によると、従業の1人は、至近距離で名指しされた恐怖で精神的ショックを受け、出社できない状況となっているそうです。
意外かもしれませんが、パワハラなどの暴言は、「暴行」には当たらないのですが、傷害罪は、有形的方法(殴る蹴るなど)だけでなく、無形的方法(ウイルスを移す・いたずら電話をかけるなど)により他人に傷害を負わせた場合にも成立します。
そのため、パワハラ発言により、従業員が鬱病などを罹患すれば、傷害罪となる可能性があります。
ただ、手を出したり、物を投げつけたりしていない限り、いくら暴言でも暴行とはいえないので、相手が病気になっていない場合には、暴行罪も傷害罪も成立しません。
■仮に土下座や謝罪を強いていた場合
強要罪が成立する可能性があります。
■社長であっても違法性は変わらない
以上説明したことは、社長の部下に対する行為であっても、免責されません。
従業員に対しても、業務命令権がありますが、名誉棄損や傷害を負わせるような方法が違法となるのは当然です。
なお、パワハラ自体を理由に何らかの犯罪が成立するわけではありません。
*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)