逃走した人より逃走を手伝った人の方が罪が重い「逃走の罪」の謎

「逃走の罪」という法律があります。

勾留されている被疑者・被告人や受刑者などが逃走した際に成立する罪なのですが、実は逃走した人よりも「逃走を手伝った人」の方が罪が重く定められています。

みなさんは何故このような刑の重さになったのか分かりますか?ちょっと難しいけど面白い刑法学の考え方に起因しています。今回はこの点について解説します。

脱獄

■単純逃走罪が軽い理由

単純逃走罪は、判決で刑が確定した人や、勾留されている被疑者が逃走した場合に成立する犯罪です(なお、逮捕段階の人は逃走罪の対象となりません)。

単純逃走罪の法定刑は、1年以下の懲役とされており、逃走援助罪の法定刑(3年以下の懲役)よりも軽くなっています。

単純逃走罪の法定刑が比較的軽いのは、刑法学上、処罰根拠の1つである期待可能性が乏しいと考えられていることが原因です。

刑罰で人が処罰される理由の説明の1つとして、規範に直面し、犯罪行為を思いとどまることが期待できたのに、それでもあえて、当該犯罪を行ったことが上げられます。

分かりやすい例をあげると、通貨を偽造して行使した者は、無期または3年以上の懲役と非常に重い法定刑ですが、知らない間に偽造通貨を掴まされた人が後に偽造通貨であることに気付いて損失を転嫁しようと、さらに偽造通貨を使用した場合、偽造通貨知情行使罪(刑法152条)となりますが、罰金刑のみの軽い刑罰となっているのも、期待可能性に乏しく、責任を軽減すべきと考えられているためです。

要するに、拘禁者は、刑罰を免れようと逃走を考えることもある程度やむを得ない要素があり、その分責任が減少する、という考え方です。

実は、単純逃走罪は、諸外国(ドイツなど)では、そもそも不可罰とする立法も存在します。

 

■逃走援助罪が重い理由

逃走援助罪とは、拘禁中の者を逃走させる目的で、逃走器具を提供したり、その他逃走を容易にする行為を罰する者です。

自らが拘禁されていないのに他人の逃走を援助することは、何ら同情すべき点がなく、逃走援助行為に出ないよう期待することができないとはいえないため、責任減少の要素がなく、単純逃走罪よりも刑が重くなっています。

 

■刑のアンバランス?

一見すると、刑の不均衡があるように感じるのも確かですが、逃走援助罪が重く処罰されているというより、単純逃走罪を特別に軽くしていると考えると、納得しやすいかもしれません。

ちなみに、拘束器具を損壊し、暴行もしくは脅迫により、または2人以上通謀して逃走すると、単純逃走罪ではなく、加重逃走罪として、3月以上5年以下の懲役となります。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

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