先日ヤフオクで「美品iPad Air WiFi32GBグレイ 化粧箱付属品有」という商品名で出品された商品が届くと「化粧箱のみ」だったという話題がありました。
落札額は3万9500円になったようで、落札者がiPad本体だったと考えていた可能性があると考えられます。
そこで、今回は、この件が詐欺に該当しないか検討します。
■詐欺罪が成立するか?
詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立し、1か月以上10年以下の懲役に処せられる可能性があります(刑法246条)。
今回の件については、結論から言うと、「人を欺いた」として詐欺罪が成立する可能性が高いと考えます。
理由は、商品説明の記載にあります。
冒頭の商品名のところに「メーカー等:Apple MD789J/Wi-Fiモデル 32GB」と記載しており、さらにその下に「付属品有」と記載されています。
ここまで読めば、通常、「出品されているのは32GBのiPad本体であり付属品もそろっているもの」と誤解するのは当然と考えられます。
さらに、出品理由として、「既に使用しているタブレットがある為出品します」と記載されています。「既に使用している化粧箱があるため」とは書かれていません。ここまで読めば、「この人は他にiPadを持っているので、不要なiPadを出品したのだ」と多くの人が考えることでしょう。
明確な書きぶりからすると、出品者も、このように誤解されると認識したうえで、あえてこのような書き方をしたのではないかと疑われます。
確かに、出品カテゴリーが「iPadアクセサリー」となっていることや、1円スタートとなっている点、「先日景品としていただきましたが」などと書かれていることから、出品したのは化粧箱だとわかる、詐欺にはならないという考え方もあるでしょう。
しかし、「カテゴリー」は絶対的な基準とはなりません。「1円スタート」というのも景品として無償でもらったものを出すのであれば、iPad本体の価格であったとしてもそれほど不自然とはとらえられないでしょう。また、本体であれば値が上がるのは目に見えているので、スタート価格をあえて高く設定する必要もありません。
また、実際に宴会などでiPadが景品として出された例を、筆者自身聞いたことがありますので、「景品として」入手したという記載も、詐欺にあたるかどうかという判断に影響を与えないように思えます。
■損害賠償の対象にもなる。
今回の件は、民法上の「詐欺」(96条)にも該当する可能性が高いでしょう。該当すれば、落札者が本体だと思っていた場合、契約を取り消すことができます。
詐欺が成立すれば、違法な行為で他人の権利を侵害したことになるので、落札者は出品者に対して損害賠償請求をすることも可能です(民法709条)。
いずれにしても、支払った落札価格や手数料、送料を請求することが可能です。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)