マクドナルドとファミリーマートが使用していた鶏肉の賞味期限が切れていたことが明らかになり、波紋を広げています。
製造元の中国の企業は組織ぐるみで不正を行っていたとも報じられていますが、テストをしつつも見抜けずに販売していたマクドナルドやファミリーマート側に責任はないのでしょうか?
■企業が負う責任の種類
企業の責任には、法的な責任と道義的な責任があります。
今回の期限切れ肉の使用に道義的な責任があるのは明らかだと思います。従って、企業の名声が落ちてしまい、売り上げが減少するかも知れません。
問題は、法的な責任があるか否かです。
法的な責任があると損害賠償責任を負担したり(民事責任と言います)、営業停止処分を受けたり(行政責任と言います)、あるいは罰金を支払ったりする責任(刑事責任と言います)が生じます。
道義的な責任よりも重大な不利益を被りますから、法的な責任の中身については、法律や判例で厳格に決められています。
仕入れ先の中国企業が期限切れ肉を使っていることを知りながら納入を受けたり(故意があると評価されます)あるいは調べれば簡単に期限切れ肉と分かるのに調べなかったりした場合(過失があると評価されます)は、企業に法的な責任が生じるのは間違いありません。
今回の事案では、マクドナルドもファミリーマートも十分な検査態勢を敷いていながら、それをくぐり抜けたようで、上記の故意も過失もないと思われます。
従って、原則として企業に法的な責任は生じません。
■実際に被害が発生したら
ただし、消費者に健康被害が生じたような場合は、例外的に法的な責任が生じます。
製造物責任法という法律があり、消費者に実害が生じた場合の企業の法的な責任を加重しているからです。しかし、この法律を適用するには、消費者の側が期限切れ肉を使った商品を食べたことにより健康被害が生じたことを立証する必要がありますので、実際に適用するのは相当に困難です。
消費者としては、信頼できる企業から商品を購入するなどして自衛するのが良いと思います。また、問題があると感じたら、消費者センターなどに相談すると良いです。
*著者:弁護士 星正 秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)