LINE乗っ取り犯を特定して責任追求することはできるのか

ここ数ヶ月で急激に被害が広がっている「LINE乗っ取り」が話題になっています。

犯人は乗っ取ったLINEの電話帳に登録されている友人らに対して「何してますか? 忙しいですか? 手伝ってもらってもいいですか?」というメッセージを送りつけ、最終的に自分が利用出来る「プリペイドカード」の購入をしてもらうという詐欺です。

実際に「プリペイドカード」を購入して相手に渡してしまった人が多く発生しているほか、乗っ取られることでアカウント停止などの措置を受けて業務に支障が出ているという声もあるようです。

このような損害を受けた場合、犯人を見つけ出して、責任追及をしたいと考えるのが普通ではないかと思いますが、乗っ取り犯を見つけ出すことはできるのでしょうか。

LINEノットリ

●インターネットといえば「プロバイダ責任制限法」

インターネットに関する法律といえばプロバイダ責任制限法です。

この法律は、たとえば、インターネット上に誹謗中傷が書き込まれた場合に、その書き込んだ人物を特定するときに使う法律で、この請求は発信者情報開示請求といいます。

なんだ、話は簡単で発信者情報開示請求をすればいいじゃないか。と思う人が多いと思うのですが、話はそう簡単ではありません。

 

●LINEにはプロバイダ責任制限法が適用できない

この法律が適用できる場合というのは、「特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害」された場合に限定されています。

特定電気通信というのは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信」と定義されるのですが、簡単にいえばインターネットで不特定多数の人がアクセスできる通信を指します。

LINEは、グループを作れるといっても、特定の個人とやりとりができるものです。そのやりとりはインターネットを介しているとはいえ、不特定多数の人がアクセスできる通信とは言えません。

また、一定の当事者間でのみやりとりされるものなので、情報の流通(=公開)があるとも言えません。

したがって、LINEにはプロバイダ責任制限法が適用できないのです。

 

●犯人を特定するには警察に頼るしかない

そうすると、犯人は絶対に特定できないのかというと、そういうわけではありません。

乗っ取りは不正アクセスに当たる余地があるので、警察であれば、強制捜査をすることで、どのような人物が乗っ取っているのかを調べることができる余地があります。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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