ある芸能人がプライベートで出かけていた際に、許可なく写真を撮るファンに対し、Twitterで苦言を呈したことが話題になっています。
街で盗撮された芸能人が不快感や怒りをあらわにしている例が増えているように思います。
「芸能人だから普段からカメラの前に立っているし、断りなく写真を撮っても問題ない」と考えている人も多いようなのですが、このようないわゆる“盗撮行為”は実際のところ問題があるのでしょうか。
●通常は犯罪になるわけではない
“盗撮”というと、あたかも犯罪であるかのような印象を受けますが、「盗撮罪」のような罪はありません。
たしかに、スカートの中を撮影使用するような盗撮であれば、各自治体の定める迷惑防止条例などに抵触することになります。
しかし、街中で単にカメラを向けるだけであれば、迷惑防止条例として取り締まることは難しく、犯罪になることは通常ありません。
●肖像権を侵害する可能性がある
しかし、犯罪にならないから問題ないというわけでは当然ありません。
街中での撮影でも、肖像権を侵害する可能性があり、侵害があれば損害賠償請求などを受ける可能性があります。
肖像権は、みだりに他人から写真を撮影されたり、それを公表されたりしないよう対世的に主張できる権利のことです。
芸能人については、その肖像を使って活動をしているという側面がある以上、一般人のように肖像権が認められるとは必ずしもいえませんが、保障されないというわけではありません。
そして、撮影を拒否しているにもかかわらず撮影することは、明確な侵害であると言い得ると思います。
●プライバシー権を侵害する可能性もある
芸能人といえども、当然、プライバシーがあります。そのため、プライベートな行動を許可なく撮影され、それが公開されれば、プライバシー侵害になり得ます。
もっとも、家や車の中を撮影されたのと、公道や店舗内での行動を撮影されたのでは、自ずと意味が異なります。
前者の方が侵害の程度が大きく、後者の方が侵害の程度は小さいといえます。
最終的に、侵害といえるかどうかは、社会生活上受忍すべき範囲といえるかどうかにより判断していくことになると思いますが、撮影されることを拒否している場合には、受忍すべき範囲を超えるという判断に傾いていきます。
芸能人も人間です。芸能人だから許される、というような安易な考えは捨てて、自分がされたら嫌ことはするべきではないでしょう。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)