ネオヒルズ族として各メディアに出演し、セレブ生活を自慢していた生活から一転、法人税の支払いなどが出来ず会社は破産し、私財を売り払い、ワンルームマンションで貧乏生活をしていると明かした与沢翼氏。
しかし、実際は未だに新宿の高級マンションに住み、運転手付きのベンツで移動していることなどが明らかになりました。
与沢氏の実態を暴露したサイトでは「自身のブログや週刊誌で嘘八百を書いて人々の同情を引き、有料メルマガを募って毎月いくらかの金を得ることは法律用語で何と言うだろう?」と批判しています。
嘘の貧乏人アピールを各所で行い、同情を集め、有料メルマガの販促を行い、実際はセレブ生活をしている行為に違法性はないのか検証してみたいと思います。
ブログや週刊誌で貧乏生活を記載しておいて、実際はセレブ生活をしていたとしたら、それを読んで信じていた人は当然腹が立つでしょう。
ましてや、その貧乏生活に同情して有料メルマガを購入したのであればなおさらです。当然「金返せ!」ということになるでしょう。
では、このようなケースで契約の無効を主張し、返金を求めることはできるのでしょうか。
■法律上問題はない
本件のようなケースを細かく見ると、「メルマガを購入する」という点については特に騙されてはいません。料金に見合ったメルマガが購入者に配信されていれば、法律上何も問題ありません。
問題なのは「貧乏生活がかわいそうだからメルマガを購入する」という動機の部分にあります。この動機の部分で騙されてしまっているのです。
このような場合を法律では「動機の錯誤」といいます。
ちょっと複雑ですが、このような動機の錯誤があった場合には、法律上、契約するときにその動機が相手に表示されている場合には、その動機を判断材料としますよ、というルールになっています。ですので、メルマガを購入する際に「貧乏生活がかわいそうだから購入します。」と伝えておけば、騙されたと主張し、契約の無効を言えるわけです。
もっとも、メルマガを購入する際にそのようなことをいう人は通常はいませんから、そうなると本件では残念ながら契約の無効を訴え、返金を求めることはできないということです。
なんとなく釈然としませんが、法律を厳密に適用するとこのような結論になってしまいます。
■不法行為になる場合は?
とはいうものの、あまりにも極端な嘘をつき続け、また、メルマガの料金があまりにも高額ということであると、不法行為に該当する可能性があり、損害賠償が認められる余地はあります。ですので、派手に貧乏生活をアピールし、それでぼろ儲けするというようなビジネスは通用しないでしょう。
与沢氏が本当にセレブ生活をしているのかどうか、真偽のほどは定かではありませんが、客を欺くようなことはせず、正々堂々とビジネスをしていただきたいものです。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)