飲食店選びに、「ぐるなび」や「食べログ」が欠かせない!という人は多いと思います。
集客手法の1つとしてこのようなサイトを利用する飲食店も多く、店舗が提供した写真やメニューなどの公式情報が掲載されているページもしばしば目にします。
しかし、そのような状況を利用して、ライバル店に「星1つ」の評価を付ける者もいるようです。
このような「星1つ」評価には、どのような問題があるでしょうか。
■実際に食べた感想かどうかが問題になる
そもそも、実際に食事をして、その感想を書き込むことに、基本的に問題はありません。
食べた結果、「星1つ」が相当と思った場合には、それ自体は仕方がないといえるからです。
しかし、実際に食べずに、または嫌がらせの目的では「星1つ」という評価をした場合、それはその店に対する嫌がらせにほかなりません。
そのため、これについては、理論的には偽計業務妨害罪が成立することになります。
また例えば、行ったことがないのに「この店よりも近くの〇〇店の方がずっと味もサービスも良い」など、自分の店の方が優れていると書き込んだ場合は、優良誤認として景品表示法違反になる可能性があります。
■立件するには多くのハードルがある
しかし、実際にはこれらを立件することは簡単ではありません。立件するためには証拠が必要になるからです。
インターネットには(一応)匿名性があるため、その評価を誰がしたのか、そのままでは分かりません。分からなければ、本当に「嫌がらせ」に当たるのかが分かりません。
また、業務妨害罪は「抽象的危険犯」といって、業務が妨害される可能性があれば成立する(つまり、結果の発生は不要)ことになっていますが、実務上は実際に業務が妨害されたという結果の発生が要求されることが多いです。
しかも、業務への支障が書き込まれた評価が原因であるといえることまで必要になります。
このような事情があるため、実際に立件されるとすれば、多数の嫌がらせとしか言えないような評価が繰り返され、結果、営業に多大な支障が生じたといえる場合に限られると思われます。
このように、立件にはハードルがあるといっても、嫌がらせのための「星1つ」評価は適法な行為ではありません。
このような行為は絶対にやめるべきです。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)
*画像は食べログのスクリーンショット