ヤフオクにて200万円分の投票済みAKB投票券が落札されたと話題になっています。
商品説明欄には「中古」と記載されていたものの、投票済みなどの表記はなく、落札者は投票出来るものと思い落札したと思われます。
出品者は落札者からの苦情に対して「中古品を落札しておいて返品するから返金対応しろというのは無茶苦茶ですよ。 不当評価としてヤフオクにも通報させていただきます。」と強気の姿勢を見せています。
このようなケースは詐欺になるのでしょうか?
■詐欺罪が成立する可能性について
今回の件については、商品説明欄に「中古」とだけ記載して、「使用済み」「投票不可」などという記載がなかったことなどを理由に、詐欺罪(刑法第246条1項)の「人を欺いて」という要件を満たすかどうかが問題となります。
個人的には「中古」という記載がある以上、通常、「使用済み」という意味が込められているといえるため、先ほど書いた問題しかない場合には、詐欺罪が成立するとして刑事責任を問うのは難しいと考えます。
ただ、商品説明欄には、報道によれば、単に「中古」とだけ記載があったのみならず、「発送はCD開封後になります」などといった記載もされていたとのことです。
この場合には、売りに出されている投票券は、「今回の総選挙に投票可能な正規のもの」という表示がなされていたといえるのではないでしょうか。
「中古」という表現があったとしても、それは、単に開封済みCDに添付されていたものという意味に理解できると認定される可能性が大きいでしょう。
そうすると、あたかも正規の投票券であるように装って、金品をファンからだまし取ったということになりますので、詐欺罪が成立することになると考えます。
■返金を受けられるか?
詐欺罪に該当する場合には、不法行為(民法709条)が成立することになりますので、落札者は、損害賠償として返金を受けることができますし、慰謝料を請求することもできます(ただ、実際にどの程度回収できるかは、オークション出品者の経済状態によります。以下、同じです)。
詐欺罪が成立しない場合でも、「錯誤」(民法第95条)が成立するとして契約の無効を主張し、返金を受けることが可能性が高いといえます。
「錯誤」とは、正確に説明するのが難しいのですが、契約内容の重要部分について勘違いがあった場合を指す、と考えていただければよいでしょう。
今回の件では、落札者は、実際には投票できない投票券を「投票できるもの」と誤解し、だからこそ高額のお金を支払ったのですし、この点から考えると、投票可か不可かは重要なものといえます。
その他、「錯誤」に該当するかどうかの判断は、実際には微妙な問題をはらむのですが、今回のケースでは、該当する可能性が高いのではないでしょうか。
出品者は、返金対応しないかのような強気の発言をしているようですが、いずれにせよ、返金を免れることは難しいでしょう。
早めに返金をしておけば被害届の提出を未然に防ぐこともできますので、個人的には、早急に返金することをお勧めしたいところです。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)