「私の方は時速10キロも出していない状況で、下り坂を自転車の方が一時停止できずに私の車の側面に接触されたものです」とコメントしたのはタレントのつちやかおりさん。女子大生と接触して相手は顔面骨折の重傷ということです。
ところで皆さんは「どんな事故でも車側に責任が発生する」と聞いた事はないでしょうか?今回の事故のように自転車が一時停止をしないで突っ込んできた場合でも車側の責任は問われるのでしょうか。解説してみたいと思います。
■車はやっぱり悪くなるのか
一般に、四輪車、単車はもちろんのこと、自転車や歩行者でも道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を阻害しないように注意する義務を負っており、その注意義務の程度は四輪者が一番高く、単車、自転車、歩行者の順に低くなります。
ここから、「どんな事故でも車側に責任が発生する」という考えが出てくると思いますが、つちやさんの「私は時速10キロも出していない」、「相手は一時停止していない」というコメントからは、一時停止をしないでぶつかって来た相手が悪いはずだという思いが伝わり、車を運転する方なら理解できるコメントかもしれません。
実際、自転車も道路交通法上の「車両」に当たり、原則として自動車や原動機付自転車と同様の交通規制を受けるので、一時停止義務があり、これに違反した自転車が悪いと思われるかもしれません。
ところが、車を駐停車していた場合であったとしても、駐停車していた運転手に責任が認められたケースがあります。
確かに、駐停車中の車両に車が追突した場合、車を運転していた人には前方不注視や車間距離を取らなかったことによる過失があるというべきで、駐停車車両には過失がないと考えられます。
しかしながら、(1)駐停車が禁止されている道路の部分で駐停車をしている場合、(2)衝突車両からみて、駐停車車両が視認不良であった場合には駐車車両の側にも相応の過失が認められることがあります。
■実際のケース
実際に、スーパーの前のやや明るい駐車禁止規制のある車道上に、無灯火で駐車中の普通貨物車に、後方から進行してきた原付自転車が衝突したケースで、原付自転車には進行方向を注視し前方の駐車車両の有無につき相当の注意を払わなければならないがこれを欠くところがあったといわざるを得ないとしながらも、駐車禁止場所に夜間無灯火で駐車させた過失は決して軽いものではないとして駐車車両に35%の過失を認めた裁判例がありました。
このように駐停車していたとしても過失が認められるケースがあることからすれば、「どんな事故でも車側に責任が発生する」という話が出てくると思います。
従って、たとえ低速度であったとしても、走行する以上は危険を伴い、事故が起きた場合には、車両運転者には責任が生じて来ますので、気をつけて運転をしていただきたいものです。
*著者:弁護士 桐生貴央(広尾総合法律事務所。「人のために 正しく 仲良く 元気良く」「凍てついた心を溶かす春の太陽」宜しくお願いします。)