「サツマイモ2本で98円!安いわ、買っちゃおう」とウキウキして、いざレジを打ってもらったら「105円」の表示。こんなとき、なんだか不当な安値に釣られたようでみじめな気持ちになってしまった方もいらっしゃることと思います。
平成16年より、消費者に価格を表示する場合には消費税などを含んだ「総額表示」が義務づけられています。
しかし、8%消費増税により、なんと一定の条件を満たせば総額表示をしなくてもよいルールができたようです。
消費の冷え込み回避といえばもっともらしいですが、便乗値上げ問題も含め、なんだか消費者を混乱させてしまいかねないこの仕組みについて、改めて内容と問題点を整理してみたいと思います。
■税抜価格の表示が可能になった理由
もともと消費税法では、商品の価格を表示する際には税込価格を表示しなければならないと定められていました(これを総額表示方式といいます)。
ですので、今年の3月までは「サツマイモ2本98円」と表示し、レジで消費税分を上乗せすることは許されておらず、「サツマイモ2本105円」と表示しなければなりませんでした。
ところが、消費税アップに伴い、特例として総額表示ではなく税抜価格の表示が許されるようになりました。
これは、まだ正式には決まっていませんが、今後消費税が10%に増税される可能性があり、そのたびに商品の価格の記載を変更することが非常に手間がかかるという理由によるものだと思われます。ですので、今までは許されていなかった「サツマイモ2本98円、レジで105円」ということが許されるようになったのです。
■税抜価格を表示するには条件がある
もっとも、無条件で許されるのではなく、税抜価格の表示をするためにはちゃんとした条件があります。一言で言ってしまえば、「税込価格か税抜価格かがはっきり分かるように表示する」ということになります。
先ほどのサツマイモの例で考えると、「98円」という値札をつける際には「98円(税抜)」「98円(本体価格)」のように、一目見ただけで税抜価格であることがわかるように表示しないとダメということです。
個々の商品に記載しなくても、陳列棚や店内のわかりやすいところに「この棚の商品は税抜表示です。」「当店は税抜表示です。」という掲示がしてあればOKですが、レジのところに小さく表示してあるだけではダメです。
チラシやカタログ、ネット上での広告も同様です。個々の商品ごとに「税抜」「本体価格」等の表示をするか、個々の商品自体にはしなくても、チラシやカタログ、ネット広告のわかりやすい部分に「この広告の価格は全て税抜価格となっています。」という表示をする義務があります。
値札の貼り替えが間に合わず、5%の価格を記載している場合でも同様に、個々の商品に「旧税率(5%)価格」という旨を表示するか、もしくは陳列棚や店内のわかりやすいところに「当店の価格表示は旧税率(5%)となっておりますので、会計の際に新税率(8%)で計算させていただきます。」といった掲示をする必要があるのです。
そもそも消費税の増税がなければこのような混乱はおこらなかったのですが、決まってしまったものは仕方がありません。税込表示か税抜表示かをしっかりと確かめ、想定外の不利益を被らないように注意しましょう。
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*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)