日本のあるアニメがある海外ドラマを盗作しているという疑惑が発覚したと報じられています。
台詞やシーン、カット割りが海外ドラマそのままであることや、監督が「どなたかアニメ以外で面白いドラマあれば教えて下さい、うまくパクる…いや引用できる演出があればと…」というツイートをしていたことも相まって、疑惑に火がついたようです。
ではそもそも、このようないわゆる「パクリ」、「盗作」疑惑は法的に見るとどう評価するべきなのでしょうか。
■著作権法違反の可能性
盗作と聞いて思い浮かぶのは、著作権法違反だと思います。
著作権法には「盗作」という言葉は使われていませんが、盗作をすれば著作権の中の複製権、翻案権等のほか、同一性保持権や氏名表示権といった著作者人格権を侵害する可能性があります。
■判断基準は類似性と依拠性
そして、盗作問題の際に著作権法違反といえるかどうかは、類似性があるかどうか、依拠性があるかどうかにより判断をしていくことになります。
Aという作品がBという作品に似ていて、盗作だと騒がれている場合を考えると、類似性というのは、A・Bが似ているかどうかという問題で、依拠性というのは、Aという作品がBという作品に影響を受けたといえるかどうかという問題です。
本件では、海外ドラマとかなり似ているようであるため、類似性があると判断される可能性があると思います。
依拠性については、監督がその海外ドラマを知っていたのかどうかといった点がポイントになってきますが、台詞やシーン、カット割りまでが似てくるということは、そうそうないと思われることも考えると、これも肯定される可能性があると思います。
なお、これが「オマージュだった」という言い訳をされた場合はどうかを考えても、それは言い方の問題に過ぎないように思われます。
■著作権法違反になるとどうなる?
仮に、著作権法違反があるとした場合どうなるのでしょうか。
著作権者は差止めなどを請求することができるため、今後、その部分について放送したり、ビデオを販売するなどはできなくなります。実際上は、その部分を差し替えるなどしていくことになるのではないでしょうか。
もっとも、著作権法は親告罪とされており、告訴がないと罪に問うことはできませんし、海外ドラマの権利者が日本のアニメについて差止めを求めて訴えてくる可能性はそれほど高いとは思えません。
そして、著作権に反しているかどうかは、最終的に裁判所にて判断されることになるため、現時点ではあくまで「疑惑」にとどまります。
したがって、現状では特に対応が取られることはないのではないかと思います。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)