「にこ☆さうんど」運営の男が稼いだ1億円の意外な行方とは…

ニコニコ動画にアップロードされた音楽などを簡単にダウンロードできるサイト「にこ☆さうんど」の運営者が著作権法違反の疑いで逮捕されるというニュースがありました。

逮捕された男性は広告収入を通して1億3,000万円の収益を上げていたということですが、違法に稼いだこの1億3,000万円はどうなるのでしょうか?解説してみたいと思います。

macnico

■事件の概要

北海道警察本部サイバー犯罪対策課及び北海道手稲警察署は、平成26年5月8日、due及びJASRACが著作権を管理する楽曲の音楽ファイルを不特定多数の者にダウンロードさせていたサイト「にこ☆さうんど」(以下「本件サイト」といいます。)の運営者である29歳の男性を著作権法違反(公衆送信権及び送信可能化権侵害)の疑いで逮捕しました。

本件サイトでは、ニコニコ動画に公開されている動画をMP3ファイルに変換してダウンロード及びストリーム配信を行っていたもので、専用のアプリケーション等をインストールすることなく、ニコニコ動画の動画掲載ページURLを入力するだけで容易に変換・ダウンロードすることが可能となっており、1日あたり約1,500件のファイル変換が行われるなど、大規模な違法配信が行われたとされています。

そして、本件サイト運営者は、ユーザーに無料で本件サイトを利用させていましたが、本件サイトに掲載していた大手広告サービスを通じて、約1億3,000万円の収益を上げていたとみられています。

 

■刑事上の問題

犯罪行為に関連した物の所有権を取り上げて国家の所有に移すことを没収(刑法19条参照)といいますが、1億3,000万円を没収することができるのでしょうか。

没収をするためには、本件の場合で言うと、「犯罪行為によって得た物」であるといえる必要があります。しかし、広告収入によって得た1億3,000万円の収益を「犯罪行為によって得た物」というのは難しいでしょう。

なぜなら、広告収入自体は広告主との間の契約によって得た収入であるため、直接的には「犯罪行為によって得た物」とはいえないからです。

もっとも、本件サイト運営者の男性が、起訴され有罪判決を受けた場合には、懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処せられ(併科もありえます)、罰金刑として1億3,000万円の一部を強制的に取り立てられることになります。

 

■民事上の問題

第一に、著作権者から本件サイト運営者に対し、損害賠償の請求がなされる可能性があります。この場合、正規のルートによれば販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額が、著作権者が受けた損害の額と推定されます(著作権法114条1項)。

第二に、広告主から本件サイト運営者に対し、損害賠償の請求あるいは広告費用の返還請求ができるのでしょうか。

まず、広告主と本件サイト運営者ないし運営会社との間で締結された契約(以下「広告契約」といいます。)の条項として、違法なサイトに広告を掲載した場合には契約違反である等の条項があれば、債務不履行に基づく損害賠償請求をする余地があります。

もっとも、広告主も本件サイトが著作権法違反であるということを認識していた可能性が高いので、債務不履行に基づく損害賠償請求は難しいでしょう。

次に、公序良俗(民法90条)違反を理由に広告契約の無効を主張し、広告費用の返還請求ができるかについては、広告契約自体に違法性はないので、そもそも公序良俗違反とまではいえないでしょう。

したがって、広告主から本件サイト運営者に対し、損害賠償の請求等をすることは難しいと考えられます。

 

■まとめ

以上のとおり、本件サイト運営者が広告収入により得た1億3,000万円を没収することは難しく、また、広告主から損害賠償請求等をすることも難しいでしょう。

違法に得たとされる1億3,000万円を本件サイト運営者から取り上げるには、罰金刑を科すことによって国がその一部を強制的に徴収するか、若しくは、著作権者が本件サイト運営者に対し損害賠償請求をする程度にとどまると考えられます。

以上からすると、1億3,000万円の大部分が本件サイト運営者の手元に残る可能性もあるといえます。なお、1億3,000万円の売上から経費を差し引いた額について、課税されることは言うまでもありません。

結論として不当なようにも思えますが、現在の法律の限界なのかもしれません。

 

*著者:弁護士 鈴木翔太(法律事務所ホームワン。東京弁護士会所属。「依頼者の立場に立って考える」ということを基本に据えている。)

鈴木 翔太 すずきしょうた 弁護士

鈴木法律事務所

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