「新入社員に恋した43歳の乙女」恋愛とセクハラの境目は?

釣りか実話か分かりませんが、ネットの相談・発言サイトにこのような、一種珍妙なエピソードが掲載されていました。

私は今社員40人程度の会社の経理の仕事をしている43歳の独身女性です。職場ではアイドル的な存在で、いつも髪型をほめられたり仕草がかわいいなどと言われたりしています。(中略)今年久々に22歳の大卒の新入社員が入ると聞き胸が高鳴りドキドキドキドキ。(中略)彼のことを考えると夜も眠れないし、別れたくありません。

43歳のアイドル乙女はこれまで恋愛経験が無かったにも関わらず、彼の存在にドキドキしながら、付き合ってもいないのに「別れたく」ないと思っているようで、第3者としては背筋が少々寒くなるようなお話となっています。

彼女に一線を越して欲しくない。会社や社会、そして「彼」に迷惑をかけてほしくない、という思いからか、480個を超えるアドバイス(らしいもの)が寄せられています。

彼女にはこの先もずっと乙女でいてもらうために、「恋愛」と「セクハラ」の境目について、法律の観点からおさらいしておきましょう。

セクハラ

■セクハラとは?

(1)職場における性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けるもの(対価型セクハラ)と、(2)職場における性的な言動により労働者の就業環境が害されるもの(環境型セクハラ)、とされています(平成18年厚生労働省告示615号)。

(1)の典型例としては、会社の経営者が女性社員に対して性的な関係を迫ったところ、それが拒否されたために、女性社員を解雇したり、不利益な配置転換をしたりするといった、女性が上司の要求を断ったことを理由に雇用関係上不利益な取り扱いを受ける場合です。

(2)の典型例としては、上司が女性社員の体を触ったり、卑猥な言葉をかけたりしたことによって女性社員が苦痛を感じて就業意欲が低下したりするような場合です。

 

■食事に誘ったり交際を求めたりは?

それでは、会社の上司が部下の女性社員を食事に誘ったり、交際を求めたりする行為は、セクハラに該当するのでしょうか。

まず、上司による食事の誘いや交際を求める行為が、女性社員の意に反しない場合、すなわち、女性社員としても上司と一緒に食事をしたいと思っていたり、上司と交際したいと思っている場合には、セクハラにはあたりません。

セクハラが問題となるのは、上司の行為が女性社員の意に反する場合です。

まず、上司が女性社員を1、2回食事に誘ったり、一度だけ交際を求めたりしただけでは、仮に、当該行為が女性社員の意に反していたとしても、社会的にみて許容される範囲内の行為として、セクハラとまではいえないでしょう。

 

■しつこい場合は?

一方、1度断られているのにもかかわらずその後も何度も食事に誘ったり、交際を求たりしている場合には、社会的にみて許容される範囲を超える行為として、上記(2)の類型のセクハラに該当するといえるでしょう。

以上のとおり、異性の部下を持つ上司としては、軽く食事に誘うといった程度の行為であってもセクハラに該当する可能性がある、ということを肝に銘じておくべきでしょう。

 

いかがでしたでしょうか?43歳の乙女には、上記のようなセクハラの基準をきちんと押さえ、ついでに自分の気持ちも抑え、行き過ぎた行動には出ないように注意していただきたいと思います。

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

*参照:新入社員に恋した43歳の乙女 : 恋愛・結婚・離婚 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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