一定の条件を満たせば残業代が無くなるホワイトカラーエグゼンプションが議論され再び注目を浴びています。
今回はこの「残業代」について、契約で支払われるときちんと明記されていたのにも関わらず、いざ給与明細を見てみたら一切盛り込まれていない、あるいは減額されている、などの事態に遭った場合に、労働者はどのような対応を執ることができるか、紹介してみたいと思います。
私もサラリーマン経験がありますが、その時に残業代が全く出なかったという嫌な経験を持つ人間の1人です。
労働基準法上では残業代はちゃんと支給しなければならないのに、いろいろな理屈をつけて残業代を支給しないという会社は後を絶たないようです。そこで、残業代が支給されなかった場合の対処法を説明したいと思います。
■まずは上司に相談
残業代が支給されなかった場合にそれを請求するのに一番穏便かつ簡単な方法は、直属の上司に相談することです。ただ、物わかりのいい上司であればいいのですが、必ずしも物わかりのいい上司ばかりではありませんので、現実的にはなかなか難しいでしょう。
会社の労務課に相談するというのも同様、なかなか相談しにくいと思われます。そもそも労務課に相談できるような会社環境であれば、残業代不支給の問題など発生しないはずです。
■第三者機関を頼る
となると、第三者機関を頼るしかないのですが、その際に一番初めに思いつくのが労働基準監督署、(略して労基署)でしょう。
労基署は会社に対して是正勧告等の手段を用いてくれますので、ある程度の効果は期待できます。ただ、労基署は弁護士ではありませんので、会社に勧告等をするのみであって、実際に残業代を取り返してくれることまではしてくれません。
■法的手段に訴える場合は
100%回収を目指すのであればやはり法的手段に訴えるしかないでしょう。もっとも、いきなり訴訟ということでなく、労働審判という手段が存在します。
労働審判とは、10年前に制定された手続きなのですが、一番の特徴は「3回以内の期日で審理が終了になる」という点です。訴訟のように長期間にわたって審理が続くことがなく短期間で審理が終了するため、比較的使用しやすい手続きと言えます。ただ、労働審判でも決着がつかないようであれば、最終的には訴訟を選択せざるを得ません。
■残業代請求で一番重要なポイント
話は変わりますが、残業代請求で一番重要な問題が、残業の事実を証明できる証拠があるかどうか、という点です。会社側が争ってきたときに、残業をしたという証拠がないと、最終的には負けてしまいますので、もし残業代を請求しようとするのであれば、きっちりと証拠を準備しておく必要があります。
なお、残業代請求の時効は2年と定められていますので、いくら証拠があっても2年以上前の残業代は請求できません。請求するのであれば早めに行動を起こしたほうがよいと思われます。
残業代請求は労働者の正当な権利です。無理だと思ってあきらめないでしっかりと会社に請求しましょう。
*著者:弁護士 山口政貴(神楽坂中央法律事務所。サラリーマン経験後、弁護士に。借金問題や消費者被害等、社会的弱者や消費者側の事件のエキスパート。)