Appleから新型MacBook Airが発売されるというウワサが先週よりネット上を騒がせておりましたが、昨日4月29日、本当に発売されました。
AppleやGoogleなどが新商品やサービスをリリースするというウワサがたつと毎度、「いつ出る」とか「●●機能が搭載」といった情報がネットを騒がせます。
そこで気になるのが間違った情報を掲載したサイトについてです。ウワサ通りの発表がされることもありますが、中には結果的に嘘だった情報を大々的に掲載していたサイトもあります。
嘘情報を載せる事は法律上問題ないのでしょうか?この問題について考えてみたいと思います。
今回のようなケースで法律上問題となりうる責任には、大きく分けて(1)民事責任、(2)刑事責任の2つがあります。(1)民事責任は、発生した損害について賠償が請求されるような場合、(2)刑事責任は、自身の行為について、例えば、罰金を払ったり服役したりという刑罰が科される場合です。
単に誤報を載せただけでは、サイト運営者や誤報を流した本人に、民事責任も刑事責任も課されないでしょう。しかし、例えば、Apple社の窓口に誤報を真実だと信じた多数の人から苦情が寄せられ、それにより業務に大きな支障が生じたような場合など、誤報掲載の結果Apple社に対して財産的な損害が発生した場合には、サイト運営者らに対してApple社は損害賠償を請求することが可能です。
また、サイト運営者らが、あえて(あるいはそれ以上に多数のユーザーから苦情がApple社に寄せられることを狙って)誤報を載せた結果、Apple社の業務が妨害された場合には、偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立し、1か月以上5年以下の懲役刑又は1万円以上100万円以下の刑罰が科される可能性があります。
■誤報を利用して収益を上げた場合は?
一方、サイト運営者らが誤報を利用して収益を上げた場合ですが、収益の上げ方によっては、民事責任、刑事責任の双方が発生する可能性があります。
例えば、サイト運営者や誤報を流した人物が、その情報の取得料として希望者から一定の金銭を得た場合や、先行予約ができるように装って、希望者から一定の金銭を得たような場合が考えられるでしょう。
この場合には、金銭の授受が民法上の詐欺(96条)に該当することになるので、お金を支払った人は金銭授受を取り消してお金を返してもらうことができます。また、サイト運営者らには不法行為責任(民法709条、710条)が成立しますので、やはり支払ったお金を損害として賠償請求することができますし、慰謝料の請求をすることもできます。
さらに、このような行為は、刑法上の詐欺(刑法246条1項)に該当するので、サイト運営者らには、1か月以上10年以下の懲役刑が科される可能性があります。
しかし、実際には、上記のような責任を問えるケースは極めて少ないといわざるを得ません。
■実際に責任を問うのが難しい理由
まず、誤報によってApple社の業務が妨害されたケースでは、複数のサイトで同様の情報が流れていることが少なくないこと、そもそも、サイト運営者を調べ上げることが困難であることから、誰に対して責任を問えるのか特定するのが難しいと考えられます。
また、誤報を利用して収益を上げたケースでも、このような悪質なサイト運営者らは、一定期間経過後にはサイトを閉鎖してしまいます。入金させた銀行口座も他人名義のものを違法に取得したものであり、お金を払った人が騙されたと気づいたときには、お金が既に口座からなくなっていることがほとんどです。
当たり前のことですが、余計な騒動に巻き込まれたり、財産を失ったりしないようにするためには、ネットに流れる無責任なウワサを、一歩引いた目で見ることが必要です。
*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)