法律の雑学「軽犯罪法」の奇妙な内容

今回は、法律の雑学として、軽犯罪法をご紹介します。

何となくそのような法律があると名前くらいは聞いたことがある人もいると思いますが、意外な行為が刑罰で禁じられていることに驚かされます。

のぞき

■軽犯罪法の概要

日本で、刑罰を定めている法律の中心は刑法典ですが、実は、刑法典以外にもいろいろな行為を刑罰でもって禁止している法律はたくさん存在します。

公職選挙法や、独占禁止法、都道府県の迷惑防止条例、道路交通法など、例をあげればキリがありませんが、ある行為を刑罰でもって禁止している法律は、広い意味での「刑法」に含まれます。軽犯罪法も広い意味での刑法に含まれ、34の行為類型を刑罰で禁止しています。

以下、いくつかピックアップしてご紹介します。

 

■軽犯罪法が禁止する行為

(1)浮浪行為(1条4号)

生計の途がないのに、働く能力がありながら就業する意思を有さず、一定の住居をもたずにうろつく行為。

要するに、働けるのに住居も有さずに街中でぷらぷらしてはならないというものです。

(2)灯火消灯行為(同6号)

正当な理由なく、他人の標灯又は街路その他公衆の通行する場所に設けられた灯火を消す行為。街灯等を勝手に消してはならないということです。

(3)鳥獣類を逃がす行為(同12号)

人畜に害を与える恐れのある犬その他の鳥獣を逃がす行為。人や家畜に危害を加える動物を逃がしてはならないというわけです。

(4)乞食行為(同22号)

こじきをすること、及びこじきをさせる行為が禁じられています。

(5)のぞき行為(同23号)

浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服をつけていない場所をひそかにのぞき見する行為。要するにのぞき見を禁止するものです。盗撮までいかなくても、のぞき見る行為だけでも処罰されます。

(6)立小便行為(同26号)

公衆の場で、たんやつばを吐き、又は大小便をする行為。公共の場でたんつばを吐いたり、立ち小便する行為が禁止されています。したがって、渋滞中の高速道路横で立ちションする行為もこれに該当しますが、緊急やむを得ない場合には、違法性がないとして、処罰されないでしょう。

 

■法定刑

軽犯罪法は、どの類型も、「拘留又は科料」に処せられます。拘留とは、30日未満の刑事施設での拘置(収容)のことで、科料とは、1,000円以上1万円未満の罰金のことです。軽犯罪法は、いわば些細な迷惑行為34類型を処罰するものですので、刑法典に比べると軽い刑罰となっているのです。

以上、軽犯罪法の奇妙な内容について抜粋して紹介してみましたがいかがでしたでしょうか?「こんなことまで法律で決まっているの?」とビックリしてしまうようなものもありましたね。ふとしたはずみで拘置や科料の目に遭うことのないよう、気をつけておきたいものです。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

コメント

コメント