大学を卒業して仕事も一段落。
週末は友人達と仕事の話をしながらお酒を飲む、なんて方も多いと思います。
しかしそこでのちょっとした言動があなたの人生や会社にとって大ダメージを与える可能性があります。
それが「守秘義務違反」です。
居酒屋や帰りの電車の中、酔っぱらってつい喋ってしまいがちな仕事の話。どこまでが大丈夫で、どこからがアウトなのか、難しい線引きや対策などを考えてみましょう。
■情報には価値がある
企業活動などでは、情報が経済的な価値を持っていることは珍しくありません。また、個人情報など、適切に管理されていることが社会的に求められる情報もあります。
そのような情報を外部に漏らしてしまえば、企業自体が立ち行かなくなってしまったり、信頼を失うことも十分に想定されるのです。
目に見えない情報も、それだけの価値を持つことがあります。
■秘密は法律や契約によって保護されている
情報を秘密として保護する義務が法律に定められていることもあります。
例えば、不正競争防止法では、営業秘密を不正に開示する行為を禁じています。
また、医師などの専門家には、業務上知り得た秘密を漏洩してはならない義務があります。医師などの専門家による秘密漏示には、刑事罰も設けられています(刑法134条)。
最近目にすることが増えてきた個人情報保護についても、法律が具体的な規定を設けています(個人情報の保護に関する法律)。
また、特別な法律がなくても、契約の内容に秘密の保護を取り入れる場合もあります。
事業再編など業界への大きな影響が予想される場合、多額の研究開発資金を投入する場合、特定のノウハウにより業界内での優位を築いている場合などは、関係者間で秘密を漏らさない義務を負う契約が締結されます。
また、それらのプロジェクトに関わる個々の従業員が、秘密を漏らさない義務を負う誓約書を差し入れることがあります。誓約書を差し入れていなくとも、具体的な業務内容などによっては秘密を漏らさない義務を負うと解される場合もあります。
■秘密を漏らさないために注意すべきこと
従業員が秘密を漏らしてしまい、それによって企業や第三者に損失が生じれば、従業員自身が、企業や第三者から損害賠償を請求されることになります。秘密漏洩を理由として解雇される場合もあるでしょう。
まず、誓約書などを作成した場合には、その内容を十分に理解することが必要です。従業員にとって、誓約書を差し入れることが大切なのではなく、その内容を守ることが従業員の義務なのです。
誓約書を作成していない場合でも、日々の業務の中で触れる情報には、企業にとって大切な情報が多くあります。話のネタになりそうな面白い情報ほど、企業に取っては外部に示したくない情報である場合が多いでしょう。
珍しい話で友人に話したいと思ったときこそ、それが企業にとって秘密ではないか、注意すべきです。
情報によっては、特定のプロジェクトのメンバーだけに開示されている場合もあります。同じ企業内の者同士でも、話して良いとは限りません。
そして、公共の場所等で話してしまい、外部の関係者に大切な情報を知られてしまうことにも気をつけるべきでしょう。
■企業の一員としての役割を大切に
また、最近では、有名人が来店した様子などを店員がTwitterでつぶやいた結果、企業のブランドイメージが傷ついてしまう事件も珍しくありません。このような店員に法的な責任があるかは難しい問題ですが、今後はより厳しい見方をされるかもしれません。
情報は目に見えないために、つい口に出してしまって扱いを誤ることもあると思います。しかし、取扱いが難しいだけに、情報の価値を意識して適切に対応することが、信頼を得てより重要なプロジェクトに関われる近道になるかもしれませんね。
*著者:弁護士 荻原邦夫(りのは綜合法律事務所。刑事事件を主に取り扱っています。お客様に落ち着いていただき、理解していただけるよう対応します。)