日本の調査捕鯨は条約違反「国際司法裁判所」とは?

オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は3月31日、日本に対し南極海での調査捕鯨を行わないよう命じる判決を言い渡しました。ICJは、国家間の紛争を国際法に従って司法的に解決することを目的とするものですが、権限や紛争解決機能は、日本国内の地方裁判所や簡易裁判所と大きく異なります。

たまにニュースで耳にすることはあるけれどその実態は詳しく知らない、という方がほとんどではないでしょうか。今回は、ICJがどのようなところなのか、その特徴をいくつかお伝えしたいと思います。

国際司法裁判所

■強制的な管轄がない

国内の裁判所と最も異なる点は、強制的な管轄権がないことです。

つまり、基本的には、原告と被告となる両当事者国の同意がないと裁判ができません。国内の裁判所であれば、憲法で裁判を受ける権利が保障されていますので、原告が訴えを提起し、訴状の形式面に問題がなければ、被告がどんなに裁判を拒否しようとも裁判は開始されます。

被告が訴状や呼出状の受け取りを拒否したり、行方をくらましたりしても、最終的には公示送達(裁判所の掲示板に訴状や呼出状を貼りだしてする送達方法)等により、裁判が開始されます。仮に、被告が裁判所から届く訴状と期日の呼出状を無視すれば、原告の主張どおりの判決が下され、強制執行されてしまいます。

しかし、ICJの場合、当事国が事件ごとに管轄に服する旨表明するか、予めICJの管轄権を受諾していない限り、裁判が始まりません。

 

■判決の実効性が低い

また、判決内容を強制する実効性の点でも国内の裁判所と大きく違います。国内の裁判所であれば、民事であれば、強制執行(不動産の明渡し、給与差押さえ等)により、判決内容を強制的に実現できますし、刑事であれば、被告人は刑務所に収容されることにより、判決内容が履行されます。

ところが、ICJは当事者が国同士となるので、判決内容を実現するために、負けた方の財産を差し押さえたり、刑務所に入れたりすることはできず、武力を使って判決内容を履行するよう脅すことももちろんできません。UCJの判決も、勝った方の当事者が国連の安保理に判決執行の勧告や「とるべき措置」を求める制度はありますが、これとて安保理理事国の合意がなければ勧告や措置は出されず、勧告や措置自体がまた実効性に欠けます。

 

■裁判官

ICJの裁判官には地域枠があり、現在、アジア3人、アフリカ3人、ラテンアメリカ2人、東欧2人、欧米その他5人の内訳となっています。裁判官の資格は、「徳望が高く、かつ、各自の国で最高の司法官に任ぜられるのに必要な資格を有するもの又は国際法に有能の名のある法律家」で、国連総会と安保理の選挙により選ばれます。

ICJの裁判官になるのはなかなか難しい要件がありますが、裁判の傍聴は自由で、ICJのホームページから簡単に申し込めます。オランダのハーグに旅行にいく機会があったら、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

*参考:日本の調査捕鯨は条約違反 国際司法裁判所 – MSN産経ニュース

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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