引越しの法律トラブルは「引越約款」で防止しよう

春の引越しシーズンまっただ中です。

消費増税前に駆け込み契約するケースもあったそうなのですが、決して安くはないお買い物、正しい知識を蓄えてぜひとも慎重に進めたいものです。

今回は、つい面倒だからと確認を怠ってしまいがちな「標準引越運送約款」の、ぜひとも見ておいて欲しい重要ポイントを3つ、紹介したいと思います。

引っ越し

「標準引越運送約款」は、一般貨物自動車運送事業者である引越し業者が消費者との間で守るべき標準的な契約約款として国土交通省が告示で定めた運送約款です。

引越業者は、「標準引越運送約款」と同一のものを自社の運送約款として採用した場合は、本来必要とされる国土交通大臣の運送約款の認可が不要とされています(貨物自動車運送事業法10条3項)。そのため、多くの引越し業者は、「標準引越運送約款」と同じ内容の運送約款を使用しています。

「標準引越運送約款」によらず、引越し業者が独自の約款を採用するケースもありますが、その場合でも約款は国土交通大臣の認可を受けたものですので、消費者が引越し業者に仕事を頼んだ場合は、原則として約款の内容に拘束され、消費者は、約款の内容を知らなかった、約款を読んでいなかった、と言っても内容を争うことは難しくなります。

ですから、面倒でも、引越し業者と契約する前には、約款の内容をよく確認し、理解したうえで慎重に契約をすることがトラブル防止のためにも必要です。

以下、「標準引越運送約款」の内容のうち、ここだけは押さえておくべき箇所を三つだけご紹介します。

■1:見積りは無料

引越業者は、引越作業に伴う運賃・料金について、予め見積りをすることになっています。この見積りは原則として無料です。

内金や手数料を要求されても支払う必要はありません。見積りのために下見をした場合は、下見に要した費用がかかることがありますが、この場合も見積りをおこなう前に事前に申込者の了解を得ることになっています。

なお、見積りにあたって、引越し業者は、自社の運送約款を提示することになっています。

■2:解約手数料・延期手数料

引越し作業を依頼した後に申込者が業者との契約を取りやめたり、引越し時期を延期したりした場合には、解約手数料又は延期手数料を請求されることがあります。

しかし、業者がこれらの手数料を請求できるのは、解約や延期の原因が申込者の責任によるものであって、かつ、解約又は延期の連絡が見積り書に記載された荷物の受取日の前日又は当日におこなわれた場合に限ります。

また、手数料額は、解約や延期の連絡が前日の場合に運賃の10%以内、当日の場合に運賃の20%以内と決められています。

ただし、申込者の責任による解約の場合には、既に実施ないし着手した附帯サービス(エアコンの取外し、不用品の処分など)の費用は別途請求されます。

これらの手数料、附帯サービス費用の請求も、見積書に記載された荷物の受取日の二日前までに、業者が見積書の記載内容について変更の有無の確認を怠った場合は請求できないことになっています。

■3:破損や紛失についての責任

引越荷物が引越作業の過程で破損したり紛失したりした場合には、業者は、自己又は使用人が荷造り、受取り、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、損害賠償責任を負います。

ただし、この業者の責任は、荷物の引渡しが終わってから3カ月以内に申込者が通知を発しないと消滅することになっています。

引越しの場合、普段あまり使わない物や季節物の場合、引越し直後に荷造りを解かず梱包したまま保管するケースが多くみられますが、3カ月以内に破損や紛失に気づかなければ、業者に補償を求めることはできませんので注意が必要です。

3カ月以内であっても、時間が経てば、破損や紛失が引越し作業によって生じたものかどうかの証明が難しくなりますので、引越しが終わったら、できるだけ早く荷造りを解き荷物の中身の状態を確認する必要があります。

また、引越しを依頼する前の状態がどのようなものであったかも争いになることがありますので、特に大事なものについては、業者に頼んで荷造り前の状態をチェックしてもらい、ご自身でも写真をとったり、ビデオに納めたりして、万が一争いとなったときのために証拠として保管しておくようにしたほうがよいでしょう。

以上、「標準引越運送約款」を読む上で最もチェックしておきたいポイント3つをお伝えしました。無用なトラブルに巻き込まれて疲弊せず気持よく引越しを進められるよう、ぜひ覚えておいてくださいね。

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