コンビニ店主が「労働者」と認められたとのニュースがありました。
フランチャイズ加盟店主などでつくる労働組合からの団体交渉の申し入れに対し、セブン-イレブン・ジャパンが拒否したため、労働組合が岡山県労働委員会に救済を申立てました。そうしたところ、岡山県労働委員会は、「加盟店主は労働組合法上の労働者」と判断し、セブン-イレブンの不当労働行為を認定したとのことです。
子どもの頃に社会科で習った「労働三権」を覚えていますでしょうか。そのあたりに触れつつ、今回のニュースを解説していきたいと思います。
■労働三権
憲法には、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と書かれており、労働者には団結権、団体交渉権、団体行動権(労働三権)が保障されることが明記されています。
そして、この権利を具体化するために制定されたのが労働組合法で、同法7条により使用者は「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」が禁じられています。使用者が労働組合からの団体交渉申入れを拒否すると、不当労働行為となるのです。
■フランチャイズ
セブン-イレブンのように本部がブランドやノウハウを提供して加盟店が事業を行う形態はフランチャイズと言われます。英単語franchiseの意味は誰かに特権を与えることで、その意味のとおり、加盟店は本部とフランチャイズ契約を結ぶことにより、本部からブランドやノウハウの使用といった特権が与えられ、加盟店はその見返りとして対価を支払うのです。
■使用者とは?
さて、労働組合法に、使用者は団体交渉を拒否してはならないと書かれていることは先に触れたとおりですが、今回のニュースの問題点は、セブン-イレブンが加盟店主の「使用者」なのかということです。
形式的にみれば、セブン-イレブンは、店主のフランチャイズ契約の相手方にすぎず、雇用している者ではないので、店主の「使用者」に当たらないといえそうです。セブン-イレブンも、「加盟店主は労働者でない」と主張し、団体交渉を拒否しました。
ただ、これまでにも形式的には雇用関係が無いものの労働組合法7条の「使用者」かどうか争われた裁判は複数あります。最高裁が判断した事例として下記の4つのようなものがあります。
・油圧器の製造販売会社が社外の設計業者との請負契約により長期で受け入れていた社外工の使用者と認められた例
・民間放送会社が、放送出演契約により出演報酬を支払っていた放送管弦楽団員の使用者と認められた例
・キャバレー経営者が、バンドマスターとの音楽演奏請負契約により長期間継続してキャバレーでダンス音楽等の演奏を行わせていた楽団員の使用者と認められた例
・民間放送会社が、テレビ番組制作等の請負契約により下請会社3社から受け入れていた従業者らの使用者と認められた例
最高裁は、4つ目の事件の判決で、基本的な労働条件等について部分的とはいえ雇用主と同視できる程度に現実的・具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて使用者にあたり、当該労働条件等に関する団体交渉を拒否できないと述べました。
■コンビニ店主の特殊性
ここに挙げた4つの最高裁判例は、雇用契約類似の契約だったり、直接の雇用主の権限が(全体的か部分的かはともかく)弱い事例でした。
コンビニ店主の場合には、直接の雇用主がいるわけではなく、むしろ自らが人を雇って管理する立場にあります。そのような人を雇う立場の者でも、本部との関係においては相対的に労働者にあたるとされた点で今回の岡山県労働委員会の判断は特徴的だと思います。
■今後について
今回の判断は岡山県労働委員会が出したものですが、報道によれば、セブン-イレブンは中央労働委員会へ再審査を申し立てるか、命令の取消を求めて裁判所に提訴するとしています。
フランチャイズビジネス全体への影響を与えかねない事案ですので、今後、中央労働委員会または裁判所がどのような判断をするか、気になりますね。