民事再生を申し立てているビットコイン取引会社のマウント・ゴックスに対する米国等における損害賠償訴訟で、その矛先が、同社の預金先だったみずほ銀行にも向けられていると報じられています。
報道によると、みずほ銀行がマウント・ゴックスの資金と同社顧客の資金を区別せず、同社の不正を知りながら銀行サービスを提供したことで利益を得た疑いがあるということなどが理由とされているようです。
いったいこれはどういうことなのか、日本でも同じような請求が成り立ち得るのか検討してみたいと思います。
■不法行為による損害賠償請求と構成される
みずほ銀はマウント・ゴックスの顧客と、この件で直接の取引があった(=契約関係があった)わけではありません。そのため、顧客が損害賠償を請求するためには、みずほ銀の行為が不法行為であるといえる必要があります。
不法行為があるといえるためには、損害と行為があり、その間に因果関係がある必要があります。顧客に損害が発生しているのはよいとして、みずほ銀は何かをしたといえるのか、という点がまず問題になりそうです。
■作為義務が必要
報道を見る限りですが、みずほ銀が「何かしらの対策をしなかった」ということが問題とされているようです。このような「しなかった」ことを不作為といいますが、不作為が「行為」であるといえるためには、「するべきなのにしなかった」といえる状況が必要です。
「マウント・ゴックスの資金と同社顧客の資金を区別せず、同社の不正を知りながら銀行サービスを提供した」ということが理由とされているとのことですが、マウント・ゴックスの資金とマウント・ゴックスの顧客の資金を分けて管理する必要があったのかという点が問題になりそうです。
通常、銀行は資金を預けられれば、それをそのまま口座で預かることになるだけで、別々に管理することはないと思われます。
そのため、普通に考えると、「するべきなのにしなかった」といえる状況があるかについては、疑問の余地があると思います。
■みずほ銀が不正を知っていたら?
ただ、みずほ銀がマウント・ゴックスの不正を知っていたということであれば、 そもそもサービスを提供しないという選択をし得たかもしれません。
このように言うことができる証拠があるのであれば、不法行為が成立する余地は一応あるとは言えそうです。
日本でみずほ銀行に責任が認められるというと難しいという印象はありますが、今後の事実解明に期待したいところです。