ドワンゴ「就職受験料」に行政指導!職安法を読み返す

ニコニコ動画で知られる大手IT企業「ドワンゴ」が入社を希望する学生から受験料を徴収する制度を導入したことについて、厚生労働省が、職業安定法に基づいて行政指導したそうです。

報道などによると、厚生労働省は、受験料制度が職業安定法違反にあたると判断したものでは無く、自主的に徴収をやめるよう求めたようですが、ドワンゴが受験料制度導入を発表したときから、職業安定法39条に該当するのではないかとの声が上がっていました。

職業安定法とは何か、なぜそのような法律が制定されたかなどを、解説したいと思います。

職業安定法

■職業安定法とその制定の経緯

職業安定法は昭和22年に制定された法律で、労働者の募集・職業紹介・労働者供給について規制している法律です。

近代的産業の創成期では、労働者の募集を仕事とする人達が雇用主に労働者を紹介することにより報酬を得ていました。このような有料職業紹介では、とにかく契約を成立させて報酬を得ようと、労働者の意思や能力を無視し、適正な労働条件を確保することなどは二の次で、労働者に不利益な契約を成立させることも多くありました。

また、労働者供給事業では、支配従属関係を利用して、本来労働者に支払われる賃金の一部を種々の名目でとりあげる、いわゆる中間搾取も行われていました。

そのようなことから、公共職業紹介が始まり、職業安定法は有料の職業紹介、労働者供給事業を原則として禁止しました(その後、時代の移り変わりと共に規制が緩和されています)。

■職業安定法39条

職業安定法39条は、労働者を募集する者やその募集の受託者が、募集に関して労働者から報酬を受け取ることを禁止する内容で、法律制定当初から置かれている規定です(ただし、制定当時は40条でした)。有料職業紹介の弊害を除去するには、労働者を必要としている事業主からの報酬だけでなく、労働者からも報酬を受け取ることを禁止する必要がありました。

「報酬」は、いかなる名義でも受け取ってはならないとされ、39条に違反すると、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課されることとなっています。

もっとも、厚生労働省の「労働者供給事業業務取扱要領」という文書では、39条の「募集」は、「雇用しようとする者が、自ら又は他人をして労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」と書かれていて、また「採用試験は・・・募集とは別の行為である。このため、採用試験の手数料を徴収することは法第39条の報酬受領の禁止には該当しない。」と明記しています。 そうすると、現時点での厚生労働省の解釈に従うと、ドワンゴが受験料を徴収することは違法でないとの結論になりそうです。

■行政指導

今回、ドワンゴには行政指導として「助言」がされたそうですが、行政指導は、ある行為を行うように(又は行わないように)求める指導、勧告、助言などで、行政処分ではないものを言います。

行政指導には、権利を制限するといった法律上の拘束力はなく、指導された側の自主的な協力を前提としています。 つまり、ドワンゴが来年も引き続き受験料を徴収したとしても、現時点では、そのこと自体で制裁を加えられるようなことはありません。

■最後に

ドワンゴの導入した受験料制度が、職業安定法違反になるかはともかく、厚生労働省は、同様の取り組みが社会的に広がるとお金を払える人だけが採用試験を受けられる状態になってしまうことを危惧しているようです。

ただ、受験者数を抑えるということは、会社にとって重要な戦力になったかもしれない人材が応募を控え、採用できないということにもつながります。 今後、この制度がどの程度広まるのか、受験料の高騰などの弊害を生むのかどうか、その他どのような問題が現実に起きそうか、皆さんも考えてみてはいかがでしょうか。

*参考:ドワンゴ就職受験料、厚労省が中止求め行政指導 : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

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