事件を起こしても海外逃亡したら「逃げ得」なの?

先日、日本で犯罪行為を行った外国人が、海外逃亡したというニュースが流れました。

警視庁は捜査をしているものの、容疑者は再来日する可能性が低く、身柄確保は難しい状況であるとも言われているようです。

しかし、海外で所在地が分かっていながら再来日するまで逮捕はできないのでしょうか?

そこで、今回は、事件を起こしても海外逃亡により、逮捕勾留されたり、裁判により刑を科されるのを免れることができるのかについてお話ししたいと思います。

飛行機

容疑者の身体の確保の方法(1)「犯罪人引渡し条約」

まず、日本国内で行われた犯罪については、容疑者が海外逃亡したことにより捜査を中止しなければならないというルールはありませんので、証拠収集、関係者からの事情聴取などの捜査活動は行われます。

とはいえ、犯罪捜査のためには、容疑者の取り調べは必要不可欠ともいえるものなので、当然、捜査機関としては、海外に逃亡した後もその容疑者の身体を確保したいということになります。

海外逃亡した容疑者の身体を確保する方法として、犯罪人引渡し条約に基づいて、渡航先の国から容疑者を引き渡してもらうという方法があります。しかし、日本がこの条約を締結しているのは、韓国とアメリカ合衆国の2か国に限られています(これは他の国と比較して圧倒的に少ないとのことです)。

ですから、容疑者が、この二つの国以外に逃亡してしまった場合には、先の条約に基づいて身体拘束をすることはできません(なお、締約国同士の間でも引渡しを拒絶される場合もあります)。

 

■容疑者の身体の確保の方法(2)「国際手配」

犯罪人引渡し条約が締結されていなくても、国際手配(マスコミでは「国際指名手配」と呼ばれます)という方法により、容疑者の身柄を確保することが可能です。

国際手配とは、国際刑事機構(ICPO)が加盟国の政府を通じて、行方不明者や容疑者の捜索を行う制度であり、この制度によって逮捕された容疑者については、犯罪人引渡し条約の締結の有無にかかわらず、その容疑者が犯罪を起こした国に送還されて逮捕されることになります。最近では、シーシェパードの調査捕鯨妨害事件で、容疑者が国際手配され、その後日本に送還されたということがありました。

 

■容疑者の身体を確保できない場合

容疑者の身体を確保できない場合には、逃亡先の政府に対して、代理処罰を申請するという方法があります。代理処罰というのは、当該国家の法律に基づいて、容疑者を処罰してもらうというものですが、その国で該当する犯罪が規定されていない場合には、代理処罰はされないこととなります。

このように、海外逃亡した容疑者の身体を確保する方法や、処罰を確保する方法は複数あり、いわゆる「逃げ得」が許されるケースは少ないといえるのではないでしょうか。

 

 

*著者:弁護士 寺林智栄(琥珀法律事務所。2007年弁護士登録。法テラスのスタッフ弁護士を経て、2013年4月より、琥珀法律事務所にて執務。)

寺林 智栄 てらばやしともえ

ともえ法律事務所

東京都中央区日本橋箱崎町32-3 秀和日本橋箱崎レジデンス709

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