会社のコピー機を壊したら毎月給料カット…どこまでの範囲なら許される?

普通に仕事をしている中でも、ついうっかり会社の備品を壊してしまうということは誰にでも起こりえることだと思います(実際にご経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか)。

上司や社長に謝罪して一件落着となればそれで良いのですが、企業によっては備品を壊してしまった際に、修理費用や再購入費用をその社員の給与から天引きするといったケースがあるようです。果たしてこのような天引きは法的に許されるのでしょうか?

 

Q.備品を壊したら修理費用が給与天引き……こんなのあり?

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A.天引きが「懲戒」として行われるならば全くの違法とは言えませんが、それでも天引きできる額には限度があります。

まず、結論としてはこのようなケースは完全に違法と言うことはできません。その会社の就業規則に「会社の備品を破損した者は懲戒処分とする」などという決まりがあれば、たとえ単なる不注意によるものであっても懲戒処分され得る可能性があるからです(ただし、そのような規定が就業規則にない場合には、そもそも会社は懲戒処分を行うことはできません)。

また、仮に懲戒処分を行う場合であっても、備品の修理費用を給与天引きするということは法律上許されません。

懲戒処分として給与カット(「減給」と言います)を行う場合であっても、その人の日給(正確には「平均賃金」と言います)の「半額」を超えてはならないと労働基準法によって定められているからです。

よって、仮に10万円のコピー機を壊してしまい、減給処分を受けることになったとしても、10万円を給与から天引きすることはできません。壊した方の日給(平均賃金)が1万円だったとすると、コピー機を壊したことによる減給額は5,000円が上限となるのですね。

それ以上の金銭的負担(例えば完全な弁償など)を会社から命じられたとしても、基本的には従う必要はないのだと覚えておきましょう(ただし、「ワザと」もしくは普通に仕事をしていれば起こり得ないような「重大なミス」によって備品を壊した場合、減給とは別に民事的な損害賠償請求を受ける可能性は考えられるため、くれぐれも仕事は注意して行うようにしましょうね……)。

 

*取材・文:ライター 松永大輝(個人事務所Ad Libitum代表。早稲田大学教育学部卒。在学中に社労士試験に合格し、大手社労士法人に新卒入社。上場企業からベンチャー企業まで約10社ほどの顧問先を担当。その後、IT系のベンチャー企業にて、採用・労務など人事業務全般を担当。並行して、大手通信教育学校の社労士講座講師として講義サポートやテキスト執筆・校正などにも従事。現在は保有資格(社会保険労務士、AFP、産業カウンセラー)を活かしフリーランスの人事として複数の企業様のサポートをする傍ら、講師、Webライターなど幅広く活動中。

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*xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

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