仕事帰り、郵便ポストを見てみると大量のチラシが……なんて経験をした事がある方は多いかもしれません。
興味が無いチラシはただのゴミと変わりませんが、ゴミをポストに入れられると思えばなかなか不快なことをされているともいえます。
当たり前のように投函され、当たり前のように受け取っているチラシですが、法的に考えると、このような行為に違法性はないのでしょうか?
■普通は違法にならない
普通の商業用の広告チラシを一般住宅やマンションのポストに投函しただけであれば違法とはならないと考えます。
実際のところ、「チラシ・勧誘お断り」と明記しているマンションをよく見かけると思いますが、そうしたマンションに商業用の広告チラシを投函して逮捕されたという例を聞いたことがありません。
これに対し、政治的意見を掲載したビラを配るために公共の施設に立ち入った場合や一般の住居でもピンクビラを投函した場合には、住居(建造物)侵入、条例違反(ピンクビラの投函の場合)の犯罪を行ったものとして処罰される場合があります。
■住居侵入、建造物侵入
住居侵入、建造物侵入は、住居(建造物)の平穏、住居(建造物)に誰を立ち入らせるかの自由を保護するために犯罪として処罰されます。
住居とは、人が日常生活を送る場所をいいます。建物だけでなく塀や壁で囲まれた部分も住居(建造物)として扱われます。
侵入とは、住居者(管理者)の意思に反する立入り、住居(建造物)の平穏を害するような立入りを意味します。侵入に当たるかどうかは、建造物の性質、管理状況、管理権者の態度、立ち入りの目的といった事情を元に判断されます。
商業用の広告チラシを「チラシ・勧誘お断り」と明示している一般住宅や居住用マンションのポストに投函する行為は、住居者(管理者)の意思に反する立入りと言えるかも知れませんが、住居(建造物)の平穏を害するとまで言えませんし、処罰するまでの違法性はないと考えられます。
これに対し、政治的ビラを配るために公共の施設に立ち入ったような場合、建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立ち入りの目的から管理権者が容認していない立ち入りと合理的に判断できるとして建造物侵入罪の成立が認められた例があります。
■条例違反
条例の中には、住居へのピンクビラの差し入れを禁止して違反者に罰則を設けているものもあります。
■対応策
「チラシ・勧誘お断り」と明示しているのに、同じ事業者からチラシがしつこく投函されるような場合、内容証明郵便で証拠として残る形で何度か注意・警告し、それでも止まない場合、この場合にはさすがに違法でないのかということで警察の協力を求める、といった対応になるかと思います。
*著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)