驚愕の「別人作曲」にレコード会社は法的対応できる?

「交響曲第1番 HIROSHIMA」やゲーム「鬼武者」のテーマ曲で有名な作曲家佐村河内守氏の「別人作曲」問題が話題になっています。

35歳の時に聴力を失ってから「絶対音感」を頼りに作曲しているとのことでしたが、全く別の人が作曲しているとなれば失望するリスナーや関係者は少なくなさそうです。

広島市の市民賞取り消しが検討されたり、ソチ五輪のフィギュアスケートで高橋大輔選手が使う「ヴァイオリンのためのソナチネ」が出版中止を決めたり、と早くも影響が出ているなか、作品を発売する日本コロムビアは「大きな憤りを感じて」いる旨リリースを出しています。

作品の発売元に対しては、数多くのCDやDVDの返品が相次ぐものと思われます。楽譜も出版されているのであれば、その返品もあるでしょう。交響曲第1番に限らず、高橋選手がショートプログラムで使用することが決まっていた「ヴァイオリンのためのソナチネ」の売れ行きも凄かったと聞きます。

一方、今後も過去の売り上げから見込まれる数の販売予定のCDやDVD、楽譜などを見込んで、得られるべき利益を計算していたのでしょうが、いずれも出版中止となることにより、得られるべき利益が得られなくなったという損失が発生しています。また、これらの利益を見込んで、佐村河内氏には、相当な金額のギャラを支払っているだろうと思います。

これら、予想しうることに対して、発売元である日本コロムビアは、佐村河内氏に対してどんな法的対応をとることができるかを検討してみたいと思います。

作曲家

■消費者からの返品を受け付ける義務は?

まず、消費者からCDやDVDの返品を受け付ける義務があるかどうか、です。

日本コロムビアは、今回の氏のゴーストライターの件や、全聾が虚偽であったことについて、知らなかったとのことですので、CD等の販売行為について消費者が損害賠償の一環として返品を求めたとしても、過失はなかったということで返品に応じる義務はないようにも思います。

しかしながら、日本コロムビアの信用問題がありますので、返品には応じざるを得ないのではないかと思います。当職もYouTubeなどで氏の映像を見たりしましたが、「あれ?聞こえてるじゃん!」と思うところもあり、全聾が虚偽であったことについて見抜けなかったことについて、果たして本当に過失がなかったか疑問なしとはし得ないのだろうと思います。

そういうことを考えますと、返品に応じた金額、そのための手数料等の金額が、日本コロムビアにとっては損害と言えます。よって、これらについて、氏に対して損害賠償請求することが可能になります。

 ■得られると予測し得た利益については?

また、氏の虚偽によって今後の出版が中止されたことに伴う、逸失利益(得られると予測し得た利益)についても、同様に損害賠償請求できることになります。

もちろん、それを見込んで氏に支払われたギャラも損害賠償として返還の対象となります。

■刑事告訴の可能性は?

氏がこれらに対応しない場合には、刑事告訴も可能になります。

実は著作権法121条には、著作者名称詐称罪という刑事罰が規定されているのです。つまり、著作者でない者の実名もしくはペンネームを著作者とした場合には、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金刑又はこれを併科すると規定されているのです。

氏の件は、全聾の被爆2世の奇跡の「現代のベートーベン」が作ったという、その背景をもとに、日本コロムビアがCD等を発売するに至ったわけですが、そのような発売元の期待を裏切ったと言う意味で、まさにこの著作者名詐称罪にあたるわけです。

また、詐欺罪による告訴も検討可能かと思われます。

氏との関係では、様々な問題が山積みとなり、氏の顧問弁護士も大変だと思います。せっかく生まれた名曲が傷物にならないよう、氏には誠実に対応してもらいたいと思います。

小野智彦
小野 智彦 おのともひこ

大本総合法律事務所

〒100-6617 東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー 17F

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