商品などへの異物混入のニュースが連日報じられていますが、それに加えて、お菓子の袋に爪楊枝や1円玉を混入させる動画が話題になっています。
また、同一人物が投稿した動画には、万引きをする動画もあるなど、様々な犯罪動画が投稿されています。動画を投稿したのは三鷹市に住む無職の少年であると断定され、すでに万引き動画に関して窃盗の疑いで逮捕状を取ったと報じられています。
このような際、犯人特定はどのような手法を用いるのでしょうか。
■防犯カメラの確認や聞き込み
スーパーなどには防犯カメラがあることが普通ですが、防犯カメラの映像は一定期間が経過すると消去されてしまいます。
しかし、今回の動画は投稿されてから間もなく話題になったため、まだ防犯カメラの映像が削除されているタイミングではありません。
そのため、防犯カメラの映像から、犯人と目される人物の容姿、背格好、服装、来店頻度等が分かる可能性があります。防犯カメラの映像だけからもある程度の目星がつけられる可能性があり、あとはその情報をもとに聞き込みをするなどすれば、被疑者を特定できることになります。
今回はこのような、いわばアナログな手法で特定に至っているようです。
■IPアドレスなどから特定する方法
では防犯カメラの映像などが消去されてしまった後は特定ができないのかというと、必ずしもそうとはいえません。
動画を投稿した際の接続情報から辿っていくという方法もあります。
具体的には、今回はYouTubeに投稿されているようなので、YouTubeに対して、このアカウント使用者の接続履歴の開示を求め、IPアドレスやタイムスタンプ等の情報を得ます。
IPアドレス等の情報からは、どのプロバイダが使われているのかということが分かるため、今度はプロバイダに対して契約者の情報を求めることになります。これにより、誰が契約するプロバイダから投稿がされたのかということが分かります。
そして、契約者が誰か分かれば後はその契約者やその親族等を調査すれば、概ね誰が被疑者なのかということの特定が可能です。
なお、YouTubeへの投稿で逮捕された例として、尖閣諸島中国漁船衝突事件があります。
この事件は、尖閣諸島付近で違法操業をしていた中国漁船の取り締まりをした際の記録動画を、当時海上保安官だった人物がYouTubeに投稿したという事件です。
この事件でもIPアドレス等の情報からネットカフェから投稿されたことが判明しています。
ただし、IPアドレス等の情報が保管されているのは、概ね3か月程度のため、時間が大幅に経過していると辿ることは難しくなります。
■メールアドレスからの特定
アカウントを作成する際にはメールアドレスの登録も必要になるはずなので、メールアドレスの情報も得ることができる可能性があります。
メールアドレスがいわゆる「捨てメールアドレス」でなければ、そのメールアドレスを付与している先に捜索・差押をすることで、そのメールを使っている人物が誰かが分かる余地があります(詳細は犯罪捜査の妨げになる可能性があるため省きます)。
犯人は「警察は無能だ」などとうそぶいているようですが、逮捕されるのは時間の問題ではないかと思います。
*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)