過去の大規模な情報流出・漏洩事件ではいくらの慰謝料が支払われたのか?

ベネッセコーポレーションによる個人情報の流出・漏洩が波紋を広げています。

当初、発表された個人情報約760万件の流出から大幅に増え、最大で約2260万件の情報が流出した事が明らかになりました。しかし、ベネッセコーポレーションに限らず、過去にも大規模な情報流出・漏洩事件は発生しています。

今までにどのような事案があったのか、また、その慰謝料としていくらが認められたのか、概観してみましょう。

ベネッセのサイト

■宇治市住民基本台帳データ漏洩事件(大阪高裁平成13年12月 25日判決)

宇治市から再々委託を受けたアルバイト従業員が住民番号、住所、氏名、性別、生年月日、転入日、転出先、世帯主名、世帯主との続柄等の個人情報の記録のコピーを名簿販売業者に販売した事案で、1件あたり慰謝料10,000円が認定された。

 

■早稲田大学名簿提供事件(最高裁第2小法廷平成15年9月12日判決)

早稲田大学が、中国の江沢民国家主席(当時)の講演会に参加を希望した学生・教職員ら1,400名の名簿(氏名・住所・電話番号・学籍番号を記載)を警察に提供した事案で、破棄差戻しにした東京高裁平成16年 3月23日で、1件あたり5,000円の慰謝料が認定された。

 

■TBC情報漏洩事件(東京地裁平成19年8月28日判決)

インターネット上に保管されていた個人情報(氏名、住所、電話番号、年齢、職業といった情報のほか、身体に関する情報)がネット上から流出した事案で、迷惑メールなどの二次被害を受けた者について1件あたり30,000円の慰謝料、二次被害を受けていない者について1件あたり17,000円の慰謝料が認定された。

 

■Yahoo! BB顧客情報漏洩事件(最高裁第2小法廷平成19年12月14日判決)

BBテクノロジー(ソフトバンクBB)の顧客情報約650万人分(住所・氏名・電話番号・メールアドレス・ヤフーメールアドレス・ヤフーID・申込日)が外部に漏洩したという事案で、BBテクノロジーとヤフーが訴えられた。

地裁判決ではソフトバンクBBの責任のみ認め、1件あたり5,000円の慰謝料が認められた。控訴審(大阪高裁平成19年6月21日)では、ヤフーの責任も認められ、それぞれ1件あたり4,500円の慰謝料が認められ(合計9,000円)、上告審でもそれが維持された。

なお、慰謝料額が500円減額されたのは、会員に、500円の郵便振替支払通知書を送付したため。

 

■早稲田中学校成績一覧表提出事件(東京地裁平成20年10月24日判決)

早稲田中学校で、生徒の同意を得ずに、3年生の全生徒の氏名、番号、評定が記載された一覧表が、校長から成績一覧表調査委員会に、さらに区教委、都教委へと順次提出された事案で、1件あたり30,000円の慰謝料が認定された。

 

■ベネッセの件はどうなる?

ベネッセは当初、クレジットカード情報等の情報流出を否定し、補償もしないとしていましたが、現時点ではクレジットカード情報等の流出もあり得るとし、また200億円の補償金を準備することを表明しています。

これまでの裁判の傾向をみると、裁判をすれば1件あたり5,000~10,000円程度(クレジットカードの情報や子供の情報が含まれるともう少し高くなる可能性があります)の慰謝料が認められる可能性は高いのではないかと思います。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

*画像はベネッセコーポレーションのウェブサイトのスクリーンショット

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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