足立の花火大会のマナー悪化が話題に 「芝生にスプレーで場所取り」はあり?

7月19日に行われる「足立の花火」の会場近くの河川敷の芝生の上に、スプレーで色を付けて場所取りしている人達がいると話題になっています。

「マナーが悪過ぎる」と多数の批判的な声があがっているこれらの行為は実際、法に触れるのか、そもそも場所取りは有効なのかを考えてみたいと思います。

河川敷■場所取りは法的効力なし

法的には他人の確保した場所を奪っても、それ自体違法性はありません。

つまり、スプレーで数日前から場所取りをしたと言い張っても、その場所で花火を見る独占権までは生じないということです。

 

■行為自体は違法とは断定できない

結論からいうと、マナー違反には違いありませんが、刑罰の対象となる違法行為とは断定できません。

 

■河川敷利用の法的性格

河川敷は、国有地であることが多く、公共のものですが、原則として、誰でも許可なく自由に使用できます。例えば、河川敷で散歩やサイクリング、ジョギングをしたりする行為は、河川敷管理者の許可なく可能です。

これは、公共用財産の自由使用と呼ばれるものです。

もちろん、デモや集会、お祭りで出店を出したりする際には、自由使用の範囲を超え、河川敷を管理する河川事務所に占用許可を受ける必要があります。

河川敷の砂や石、水の採取も許可が必要です。

花火大会で使用する際には、見物客が個人で占用許可をするのではなく、主催者の自治体などが花火大会会場としての占用許可を受けています。

 

■違法でない理由

河川敷を占用するには許可が必要ですが、花火大会の場所取り程度の行為は、自由使用として許可不要です。

立ち入りが禁止されているエリアへの侵入も、建造物があれば建造物侵入罪に問われますが、土地への侵入自体は刑罰の対象とされていません。

刑法には、住居侵入罪や建造物侵入罪がありますが、建物がない河川敷では、適用はできないでしょう。

他にも不動産侵奪罪というものがありますが、これは他人の土地を窃取したと評価できるくらいの占有変更が必要ですので、スプレーを使った場所取り程度では、やはり適用できないでしょう。

国有地である河川敷にある「物」は、通常国有のものと考えられます。

しかし、国有地にある「芝生」の1本1本まで全て国有財産であると評価することは困難です。

したがって、芝生にスプレーをする行為は、器物損壊とはいえないように思います。

河川敷の芝生1本1本が全て国有財産だとすると、河川敷で花を1本摘んだだけで窃盗となってしまいかねませんし、芝生を踏んだだけで器物損壊になってしまいます。

自治体の条例で独自の罰則を設けない限り、芝生にスプレーで場所取りをしても犯罪には問われないでしょう。

なお、杭を打ち込んでロープやブルーシートを貼るなど、容易に撤去できない態様で一定の区画を占拠することは、花火大会の場所取り目的であっても、無許可占用として河川法違反となる可能性があります。

場所取りには違法でなくてもマナーがありますので、利用ルールを守って来場者皆で気持ちよく花火大会を楽しみたいものですね。

 

※本記事はスプレーでの場所取り行為を推奨するものではありません。花火大会はじめ、河川敷利用の際には法律以外にも守らなければならない「マナー」がありますので、必ず利用ルールとマナーを守りましょう。

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

*画像はTwitter @pichixxx より

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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