流出したデータに自分の情報が含まれていたらどうするべきか 弁護士が解説

某通信教育会社から大量の個人情報が漏洩していたと報じられています。

今のところ、インターネット上に流出したといったことになっているわけではないですが、今後更に問題が広がる可能性もあり、経過が気になります。

では、このような漏洩事件について、何か取ることができる対策はあるのでしょうか?

ハッキング

●個人情報の利用停止要求

個人情報保護法は、以下のような場合に個人情報の利用停止や削除を求めることができるとしています。

1…利用目的違反や、不正の手段による個人情報の取得がある場合
2…同意がないにもかかわらず、個人情報が第三者に提供されていた場合

事前の同意があるか、本人の申し出によりその後の第三者への個人情報の提供を停止するオプトアウトの手続が定められている場合を除いて、個人情報の第三者への提供はできないことになっています。

今回の事件では、某通信教育会社から不正に名簿業者に情報が流れていたということのようです。そのため、少なくとも、同意がないにもかかわらず、個人情報が第三者に提供されていた場合に当たると思われます。

したがって、某通信教育会社に対して、個人情報の利用停止や削除を求めることができます。

 

●提供された側への請求は?

では、すでに名簿業者から他の企業に個人情報が渡っているわけなので、その企業に何か言うことはできないのでしょうか。

名簿業者という存在が違法な存在であるかのように思っている人も多いですが、適切に営業している限り違法な存在ではありません。名簿業者から適切に個人情報を取得することもできます。

そのため、その個人情報が違法に漏洩させられたものであると知って取得したとなれば話は別かもしれませんが、名簿業者から個人情報を取得しても、不正の手段による個人情報の取得ということはできません。

したがって、名簿業者から個人情報を取得した企業に何か言っていくことは難しそうです(※ただし、今回のケースでは自主的に削除をしているとも報じられています)。

 

●プライバシーの値段は1万円程度

本件では、自分のプライバシー情報が漏洩されているため、プライバシー侵害を理由に損害賠償請求をすることができます。

慰謝料額として参考になるのは、宇治市住民基本台帳データ漏洩事件(大阪高裁平成13年12月 25日判決)や早稲田大学名簿提供事件(最高裁平成15年9月12日判決)、エステティックホームページ個人情報流出事件(東京高裁平成19年8月28日判決)などで、1-3万円程度の慰謝料が認められています。

身体的な情報であれば、秘匿すべき必要が高く強い法的保護に値するため、慰謝料額が多少高くなりますが、本件で漏洩したのは氏名、住所、電話番語、子供の生年月日・性別といった情報のようであり、身体的な情報ではありません。

そのため慰謝料額としては1万円程度になる可能性が高いと思います。

 

*著者:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)

清水 陽平 しみずようへい

法律事務所アルシエン

東京都千代田区霞ヶ関3-6-15 霞ヶ関MHタワーズ2F

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