結婚前に取り交わす「婚前契約」に効力はある?

皆さんは「婚前契約」をご存知ですか?

結婚前の男女が、夫婦の財産や結婚後の夫婦生活、離婚の条件等について、予め取決めをしておくことを「婚前契約」と言います。

具体的には、結婚後は夫婦で家事を分担する、子育てには夫婦協力する、夫婦の生活費は夫の負担とする、妻が結婚前に所有している不動産を結婚後に夫婦の共有財産にする、などといったものです。

このような婚前契約ですが、法律ではどのように扱われるのでしょうか。

花嫁

法律ではどのように規定されているのか?

民法では、夫婦が、夫婦の「財産」について、婚姻前に法定財産制と異なる契約(「夫婦財産契約」)をすることができる、と規定しています(民法755条、756条)。

そのため、夫婦財産契約をしておけば、婚姻前にすでに所有していた財産や結婚後に相続によって取得した財産(「特有財産」)など、本来、結婚後であっても夫婦どちらかの単独の財産となるものについて、夫婦共同の財産としたり、あるいは、他の配偶者の単独の財産とすることができます。

 

契約の内容を第三者にも対抗できる?

もっとも、夫婦財産契約の内容について、夫婦以外の第三者に対抗するためには、「登記」をしなければなりません(民法756条)。

具体的には、婚姻届を提出する前に、夫婦そろって法務局で登記申請をする必要があります。

 

契約内容の変更は?

なお、一度契約を締結してしまうと、婚姻後は、原則として、契約の内容を変更したり、契約を取り消したりすることができません(民法758条1項)。

そのため、結婚前の一時的な感情に流されて安易に契約をしてしまうといったことがないよう、契約前に、内容を慎重に吟味・検討する必要があります。

 

財産関係以外の約束も有効か?

夫婦財産契約の対象となるのは、夫婦の「財産」だけです。

冒頭の例で挙げたような、夫婦間の家事の分担や夫の子育てへの協力など夫婦間の財産とは関係のない事項についての取決めは、夫婦間の内部的な契約ということになりますので、結婚後も自由に内容を変更したり、一方的に取り消したりすることができます(民法754条)。

そのため、結婚前に家事に協力しない場合には罰として10万円を支払う、といった約束をしていたとしても、結婚後に夫が家事には一切協力しないという場合であっても、夫が契約を一方的に取り消してしまえば、妻から夫に対して10万円を支払うよう請求することはできません。

もっとも、結婚後に問題になりそうな事項について、予め夫婦間で取決めをしておいて、将来の紛争の芽を摘んでおくということは、円満な夫婦生活を送るうえでは有用かもしれません。

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

理崎 智英 りざきともひで

高島総合法律事務所

東京都港区虎ノ門一丁目11番7号 第二文成ビル9階

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