批判殺到のユニクロ 問題の利用規約を弁護士が徹底解説

ユニクロが開始した「UTme!」というサービスが話題になっています。

スマホを利用し、誰でも簡単に、Tシャツのデザインを作成・販売、及び他の人が作ったTシャツを購入できる便利なサービスですが、利用規約に問題点があるとして批判が殺到しました。

批判を受けて利用規約が修正される予定という事ですが、当初発表された利用規約の問題点についてもう一度おさらいしてみたいと思います。(5月21日追記:ユニクロが利用規約を修正しました。)

 

ユニクロ

 

■変更前規約の意味するところ

変更前の規約は、以下の内容ですが、その意味するところはこうなります。

(1)ユーザーは、投稿データについて、その著作物に関する全ての権利(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含みます)を、投稿その他送信時に、当社に対し、無償で譲渡します。

つまり「ユニクロが、ユーザーが投稿したデザインと同じTシャツを使用して販売することは自由であり、販売するにあたってユーザーにいちいち許可をもらったり、同意を得たりする必要がありません。」となります。

ユーザーが投稿したデザイン(写真も含みます)の多くは、著作権法上の著作物として保護されます。

著作権者であるユーザーは、本来であれば、デザイン(著作物)を使用したTシャツを作成したり、広告・宣伝に用いたりする権利を保有しており(これを著作財産権といいます)、ユニクロがTシャツを販売しようとすれば、デザインを生み出したユーザーに許可をとって、売上からデザインの使用料を支払う必要があります。

ところが、この規約により、投稿されたデザインの著作財産権がユニクロに「無償で」移転するため、ユーザーが考えついた秀逸なデザインを、ユニクロはあたかも自社で生み出したときと同じように、自由かつ無償で衣服や広告宣伝に利用できるようになります。

投稿されたデザインの衣服が爆発的に売れてユニクロが儲かっても、ユーザーは「印税」を一切要求できません。

(2)ユーザーは、当社及び当社から権利を承継しまたは許諾された者に対して著作者人格権を行使しないことに同意するものとします。

要するに「ユニクロは、投稿されたデザインを自由に改変することができ、ユーザーはそれに対して異議をいえない。」というものです。

著作権者であるユーザーには、意に反してデザインを改変されたりしない権利である著作者人格権があります。これは著作財産権と違って、合意があっても他者に譲渡することができません(著作権法59条)。

そこで、利用規約では、無償譲渡ではなく、「行使しない」と定められています。

これにより、ユーザーは、デザインを勝手に改変されないという「著作者人格権を保有してはいるが、行使できない」状態になります。なんだか、国会で議論されている憲法の話と似ていますね。

(3)ユーザーは、当社が実施する各種キャンペーン等に投稿データが使用されることに同意するものとします。

この条項は、さきほどの(1)とほぼ同じ効果です。

 

■規約は違法?

ただ、前の規約が違法かというと、そうとはいいきれません。

日本の法制では、消費者とユニクロがどんな利用規約で合意するかは原則として自由であり、ユニクロに一方的に有利な利用規約でも、当然に違法無効とはされません。

消費者の利益を一方的に害するものとして、消費者契約法10条で無効になる可能性はありますが、サービスを利用するかの選択肢が大きく残されていることを考えると、適用は難しいのではないでしょうか。

 

■ユニクロが変更する理由

違法でないとすると、ユニクロはなぜ規約変更するのでしょうか。

推測にすぎませんが、ユニクロがデザインの著作権を無償で取得して販売・利用することによる利益よりも、評判が悪くなることによる悪影響の方が大きいと判断したと考えられます。

実はユニクロに限らず、世の中のサービス利用規約は、利用者(消費者)に不利な条項で溢れかえっています。

規約はサービス提供事業者が作成するので当たり前ですが、普通は、顧問弁護士に相談しつつ、適法ぎりぎりのラインで事業者に有利な条項を盛り込みますので、一旦利用規約に同意してしまうと、後でそう簡単に無効にはなりません。

サービスの利用規約に同意するときは、できるだけ内容に目を通しておくことをお勧めします。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

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