法律の雑学 意外と知らない「刑の決め方」

裁判員裁判が始まって数年経ち、読者の皆様のなかにも裁判員として法廷に立った、あるいは裁判員候補者に選ばれた、という方がいるかもしれません。裁判員になると、有罪無罪に加えて、被告人の量刑も裁判官と一緒に評議をして決定することになります。

今回は、刑事裁判での量刑の決まり方についてご紹介します。

裁判

 

■「量刑相場」とは

日本では、同じような犯罪で同じような情状であれば、全国どこの裁判所のどの裁判官でも、同じくらいの刑罰が下されることが多く、量刑相場というものが存在します。裁判所が東京地裁でも、函館地裁でも、はたまた九州の佐賀地裁唐津支部であっても、どの裁判官にあたっても刑に大きな違いがないという意味で、量刑相場は大きな意義があるといえるでしょう。

もし、量刑相場がないとすれば、被告人にとっては、どこの裁判所のどの裁判官に裁判されるかによって人生が大きく左右されることになり、不公平が生じてしまいます。

裁判所の裁判官室からは、裁判所で構築した量刑データベースシステムにアクセスすることができ、罪名や行為態様、情状等のキーワードを入力することにより、同種事件のこれまでの量刑相場を検索することができます。

 

■刑の決め方

もっとも、被告人の刑罰は、量刑相場だけで決めるわけではありません。最終的な刑罰は、裁判で取り調べられた証拠から一切の事情を総合考慮して決定します。

刑を決定する考慮要素は、大きく分けて、犯罪事実に関する犯情と被告人の一般的な事情に関する情状に分けられます。

犯情:犯罪類型、生じた結果の重さ・内容、犯罪行為の態様、動機、犯罪後の行動

一般情状:被告人の反省態度、前科前歴、再犯可能性

これらの事情と量刑相場との整合性を総合的に考慮し、最終的な刑罰が決まります。

そのため、例えば、殺人が問題となる事案では、死亡という結果は同じでも、行為態様として、凶器の種類、凶器の使用態様(ナイフであれば刺した部位)は千差万別であり、平たくいえば、より凶悪で、悪質性が高ければ、最終的な刑罰も重いものとなります。

 

■あなたが裁判員になったら

このように刑の重さを決めるときに考慮すべき要素多岐にわたっており、さらに過去の事例や全国的な不公平が生じないように量刑相場とのバランスも考える必要があります。

裁判官にとっても刑の重さを決めることはそれなりに頭を悩ますもので、簡単に決まるものではありませんが、裁判員には裁判官からどのように刑を決めるか丁寧な説明がありますので、それを踏まえて自身の経験と感覚から意見を述べれば問題ありません。

 

*著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)

星野宏明
星野 宏明 ほしのひろあき

星野・長塚・木川法律事務所

東京都港区西新橋1‐21‐8 弁護士ビル303

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