夫が働かない…収入減を理由に離婚はできる?

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収入は生きていく上で大切な要素ですが、配偶者の収入が激減したり、はたらく意欲がないといった場合には離婚は成立するのでしょうか?

センシティブな問題であるがゆえに、人には中々聞けない話かもしれませんが、今回踏み込んで解説してみたいと思います。

 

■収入減だけでは離婚は難しい

結論からいえば、夫の収入が減ったことだけを理由として、夫が拒否しているにもかかわらず離婚ができるかというと、それだけではかなり困難です(減収以外に別居など、他の事情があればまた別ですが)。

ただし例外的に、夫にそもそも働く意欲が欠如しており、家庭を支えるための努力を一切しないような場合には、離婚が認められる可能性はあります。

 

■離婚成立には合意か裁判か

まず押さえておかないといけないことは、離婚するには(1)夫と合意して離婚するか、(2)裁判所に裁判離婚を認めてもらうかの、どちらかしかありません。

「どうしてもっとがんばらないのか」「収入を元に戻せるようどうして頑張らないのか」といったことを夫に詰め寄り、結果的に夫も結婚生活を続ける意思を無くした場合であれば、(1)夫と離婚で合意できる可能性は十分ありえます(収入のことで妻から責められるというのは夫にとっては非常に辛いことであり、「もうやっていけない」と思う可能性は否定できません)。

ただし親権者をどちらにするかで意見がまとまらない場合には、そのままでは離婚届を出せませんので、調停や裁判で親権を争うことになります。

それでも仮に夫が離婚に応じない場合、(2)離婚訴訟を提起して裁判離婚を認めてもらうしかありません。

夫が拒否しているにもかかわらず裁判所の力を借りて一方的に離婚を認めてもらうということですから、裁判離婚を認めてもらうためには離婚原因が必要とされています。

ここで法律上の離婚原因にはいくつかありますが(不貞行為など)、夫の減収や働く意欲の欠如ということを問題にしたいのなら、それらが「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する、と主張するしかありません。

 

■婚姻を継続し難い重大な事由とは?

夫の収入減の理由としては、転職、降格や解雇など色々なものがありえます。その理由がどうであれ、結果としてもたらされた減収自体は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しないと考えられています。

なぜなら、夫婦には互いに助け合う義務(協力扶助義務)がありますが、夫だけで十分に稼がなければならないという理由はないからです(共働きで家事も分担するのなら、夫婦間の協力扶助義務は果たされています)。

「専業主婦を希望しているが、減収後の夫の収入では自分も働かざるを得ない。それは納得いかない」と考えるのかもしれませんが、それは単なる性格の不一致(価値観の違い)にすぎず、それだけでは離婚原因には該当しません。

また、降格や解雇の理由によっては、それが離婚原因にあたる可能性もありえるでしょうが、それは全く別問題です(たとえば、夫が部下に肉体関係を強要していた(=不貞行為があった)場合など)。

もっとも、例外的に、働く意思がない、生活能力がない、怠惰な性格というものは「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたることがあります。

たとえば、東京高裁昭和59年5月30日判決は、夫が頻繁に転職を繰り返し、安易に借財に走り、再三妻の実家に援助を求めたというケースですが、妻の請求による裁判離婚が認められています。

 

以上、まとめますと、夫の減収だけを理由に裁判離婚ができるかというとかなり困難です。

しかし、夫にそもそも働く意欲がなく毎日ぶらぶらしているような場合なら、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。

また、裁判離婚が認められないような場合でも、夫と別居した上で交渉することにより、夫が離婚に応じる可能性も十分にありますので、あきらめる必要はありません。いずれにしても一度専門家に相談することをお勧めします。

 

*著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)

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近藤 美香 こんどう みか 弁護士

秋葉原よすが法律事務所

東京都台東区浅草橋5-2-3鈴和ビル4-A

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